おやぢの部屋2
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SCHNITTKE/Concerto grosso No.1, Symphony No.9
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Sharon Bezaly(Fl)
Christopher Cowie(Ob)
Owain Arwel Hughes/
Cape Philharmonic Orchestra
BIS/CD-1727



BISのシュニトケ・エディションもそろそろ30枚近くになるのでしょう、もうほとんどの作品が網羅されてきたのではないでしょうか。そこで、その最新作はちょっとした「寝業」で迫ってきました。彼の出世作である「コンチェルト・グロッソ第1番」の別バージョンと、「交響曲第9番」の「再構築版」という、言ってみれば「異稿集」です。さっそくこちらへ聴きに行こう
「コンチェルト・グロッソ」は、1977年に作られたときには2つのヴァイオリンとチェンバロ、プリペアド・ピアノと弦楽合奏という編成でした。それを、1988年に、オーボエ奏者のヴィアチェスラフ・ルパシェフのリクエストに応じて、ヴァイオリン・ソリのパートをフルートとオーボエに書き直したものが、ここで演奏されています。このバージョンはロシアでは何度となく演奏されているのだそうですが、録音としてはこれが世界初となりました。
この時代の作品ですから、普通「シュニトケ」というと思い出すような、さまざまな様式を取り込んだものを聴くことが出来ます。冒頭からプリペアド・ピアノのソロ、というのもなかなかユニーク、いかにもバロックの模倣といった感じの「トッカータ」や「ロンド」がかもし出す冗談っぽいテイストとの対比がたまりません。こういうものには、まさにベザリーはうってつけ。装飾的な音型をとても滑らかに、ブレスもしないで処理しています。
「交響曲第9番」というのは作曲家にとっての鬼門だ、という言い伝えは、シュニトケの場合も現実のものとなりました。彼の晩年は病魔との戦い、特に、1994年に脳卒中の発作を起こしてからは、殆ど運動機能が麻痺してしまうのです。この最後の交響曲も、左手だけを使ってやっと1997年に書き上げたということです。しかし、そんな、不自由な体で書いた譜面は殆ど判読不能、とてもそのままでは演奏することは不可能でしたから、1998年に行われた初演に際しては、指揮者のロジェストヴェンスキーはきちんとした譜面を作り上げる必要がありました。しかし、この時の楽譜は言ってみれば作曲者と指揮者による共同作業の産物のようなものでしたから、初演はされたもののシュニトケ自身はあまり気に入らなかったようで、ロジェストヴェンスキーに「もう二度と演奏しないでくれ」と頼んだということです。なんか、打楽器を派手に使ったり、チャイコフスキーの曲の引用があったりと、昔のシュニトケならいざ知らず、ちょっと許しがたいものがあったのでしょうね(事実、ロジェストヴェンスキーは、このスコアに交響曲第1番と同じテイストを盛り込んだということです)。
作曲者の死後に、この自筆稿にそれほどの変更を加えない楽譜を作ることになり、ニコライ・コルンドルフという作曲家がその任にあたります。しかし、その作業は難航、彼はその仕事を完成することなく2001年に亡くなってしまいます。結局、その後を継いだアレクサンドル・ラスカトフによって修復作業は終了し、2007年にデニス・ラッセル・デイヴィス指揮のドレスデン・フィルによって、ドレスデンで初演、出版もされました。
なんとも途方のない仕事の末に出来上がった「再構築版」ですが、果たしてこれが本当に作曲者が望んだ形だったのか、という疑問は残ります。彼が最後に到達した境地は、これほどまでに退屈なものだったのでしょうか。
前作ではあまり良い印象のなかったケープ・フィルですが、今回は録音のせいでしょうか、弦楽器のとても透明な響きが心にしみました。調べてみたら、録音会場が違っているんですね。写真で見るといかにも音響設計に配慮したというような新しいコンサートホール、やはり人数は少なめですが、ホールの響きに助けられて素晴らしい音に録音できたのでしょう。

CD Artwork © BIS Records AB
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by jurassic_oyaji | 2009-08-28 07:32 | 現代音楽 | Comments(0)