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ANDERSON/25 Great Melodies as Originally Composed for Piano Solo
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白石光隆(Pf)
TAMAYURA/KKCC 3024



昨年はルロイ・アンダーソンの「100周年」、NAXOSあたりは全集をリリースしてボロイ儲けがあったことでしょう。今年になってもその余波はまだ続いていて、こんな「珍盤」の登場です。これは、アンダーソン自身が、数々の名曲をピアノ独奏用に「作曲」した25曲をすべて録音したものです。このCDと同じタイトルの楽譜が出版されたのは1978年のことでしたが、なぜか、だれもそれを録音しようとはしなかったのでしょう、これが「世界初録音」だ、と、帯には書かれています。この楽譜はこちらで簡単に手に入るようですから、実際に弾いてみるのも一興でしょう。
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オーケストラの演奏によるオリジナルを聴き慣れている耳には、このピアノ版はなかなか新鮮に感じられます。その一つの要因は、リズムの滑らかさでしょうか。これは実際に楽譜がそうなっているのか、あるいは演奏している白石さんの表現なのかは分かりませんが、例えば「シンコペイテッド・クロック」などではほんの少しスウィングが入っていて、ちょっとびっくりさせられるほどです。それは、テーマが始まって2小節目のことですが、2拍目がオーケストラ版ではアンダーソン自身の演奏も含めて均等に八分音符二つになっているのに、ここでは前の音符が少し長目になっているのですよね。ただ4小節目の、ウッドブロックのリズムが本当に「シンコペイト」しているところでは、なぜかきっちり8ビートになっているあたりが、アバウトいえばアバウトなのですが。
もう一つ、「ブルー・タンゴ」という、まさにタンゴそのもののリズムを持った曲でも、ここではまるでバルカローレのような優雅なたたずまいを見せています。とてもステップを踏んで元気よく踊ることは出来そうもない、それはまるで子守唄のようなしっとりとした味わい深いものです。そんな中から、彼ならではのメロディ・ラインの美しさが浮かび上がってきます。
しかし、やはりアンダーソンの曲ではオーケストラの楽器や、普通はオーケストラでは使われないような楽器の特徴的な使い方によって強烈な印象が与えられる、というのが最大の楽しみです。そうなってくるとこのピアノ版のあまりにストイックな生真面目さからは、軽い失望が生まれるのも事実です。3本のトランペット(コルネット)が活躍する「ラッパ吹きの休日」あたりは、それがもっとも顕著にあらわれたものではないでしょうか。「ソ・ド・ミ・ソ」とか「ソ・シ・レ・ファ」といった和音を、ある時は3人が同時に鳴らしたり、ある時は前の奏者が吹いた上に順次音を積み重ねて作っていくという面白さが、ピアノでは全く同じ形になってしまって、面白くも何ともありません。しかも、2回目にはダブルタンギングで1つの音符を4つに割って吹いているのも、ピアノ版には全く反映されていませんし。
また、「フィドル・ファドル」は「常動曲」のパロディ、大人数のヴァイオリンが一糸乱れず細かい音符を弾くのが魅力なのですが、ピアノではあまりにも簡単すぎてなんだか・・・。
「サンドペーパー・バレエ」での紙ヤスリをこする音や、「タイプライター」のキーボードをたたく音などは、これらの曲にはもはや欠かせない要因であることには誰しもが気づくに違いありません。このピアノ版は、自分で演奏しながらそんな本来の音を想像して楽しむ、そんな使われ方が最も分相応なのではないでしょうか。
ですから、CDで楽しむのだったら本来のオーケストラ版を聴く方がずっと楽しいに決まってます。その音を知っているからこそ、ピアノ版でもそれなりに楽しめることになるわけで、最初からこんな不完全なものを聴く必要などはさらさらないのではないでしょうか。「世界初録音」と言ってはいますが、これがこんなに長い間録音されなかったのには、至極当然な理由があったのですよね。

CD Artwork © King International Inc.
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by jurassic_oyaji | 2009-08-31 21:59 | ピアノ | Comments(0)