おやぢの部屋2
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MOZART/Piano Concertos Nos.23 & 24
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内田光子(Pf)/
The Cleveland Orchestra
DECCA/478 1524



ピアニストの名前のあとにスラッシュが入っているのは、ここでは内田さんがオーケストラの指揮もしているのだ、という意味です。いわゆる「弾き振り」という、納豆みたいな(それは「挽き割り」)演奏スタイルですね。以前モーツァルトのピアノ協奏曲を全曲録音したときには、ジェフリー・テイトに指揮を任せていましたから、それから20年程の年月を経て新たなアプローチを展開してくれているのでしょうか。
この録音は、クリーヴランド管弦楽団の本拠地、セヴェランス・ホールで行われています。おそらく、コンサートとリハーサルのテイクをつなぎ合わせた「ほぼライブ」の録音なのでしょう。ピアノの音がオフ気味で、オケの中にとけ込んでいます。ブックレットの写真を見ると、内田さんは客席に背中を向けてオケの木管セクションあたりを正面にした座り方、これは弾き振りの標準的な配置ですね。ただ、同じ写真ではピアノの左手にヴァイオリンとチェロが座っていますから、おそらく右手にはヴァイオリンとヴィオラが来て、ファースト・ヴァイオリンとセカンド・ヴァイオリンが向かい合うという「対向型」の弦楽器配置になっているのでしょう。同じブックレットには、ウェルザー・メストが指揮台に立っている今のこのオケの集合写真が載っていますが、それは普通のファーストとセカンドがくっついている形ですから、この録音では内田さんの意向で対向型をとったのでしょうね。確かに、音を聴いてもセカンドが右側から聞こえてきます。
タイトルが上記のようになっていますから、当然イ長調の23番が先に演奏されているのだと思って最初から再生を始めたら、いきなりハ短調の暗い響きが聞こえてきたので一瞬何事かと思ってしまいました。なぜか、ジャケットの表示とは逆の順番で入っていたのですね。別にそんな気はなかったのでしょうが、何かびっくりさせられる思いです。
そんなある種の驚きは、そのハ短調の協奏曲のオケの導入の部分でも味わうことが出来ます。ここで、内田さんはなんと雄弁にオケに語らせていることでしょう。彼女は多少遅めのテンポ設定をとった上で、それは細かい表情を引き出そうとしています。短調ならではの、ちょっと濃すぎるほどの味付け、こちらの曲を頭に持ってきたのは、そんな、より思いの丈を込めた演奏を、まず聴いて欲しかったからだったのかもしれませんね。
第2楽章は明るい変ホ長調、しかし、ねっとり感は変わりません。ここではピアノが休んでいる間の木管楽器によるアンサンブルを存分に楽しむことにしましょうか。モーツァルトにしては珍しい、4種類の木管楽器が、さまざまの組み合わせで醸し出すゴージャスなサウンドは、シンフォニー・オーケストラの木管セクションならではの魅力です。
これが第3楽章になると、その粘り具合はさらに増します(やっぱり納豆だ)。停滞するギリギリの、いや、正直これではあまりにも遅すぎてフレーズが細切れになってしまっていると感じられなくもないテンポで、曲は重苦しく進みます。と、突然平行調の長調に転調して現れる木管のアンサンブルが、なんとも言えない開放感を与えてくれます。そして、その後がまたサプライズ。ここで内田さんは、バックの弦楽器を(おそらく)1本ずつにしてしまったのです。ピアノと5つの弦楽器だけの「ピアノ六重奏」、その透明なアンサンブルは、なんとも言えない爽やかさを放っていました。
イ長調の協奏曲も、アプローチは基本的に同じ、隅々までに内田さんのこだわりが反映された重厚なものでした。
でも、朝ご飯は塩鮭と焼き海苔があれば充分、その上に納豆なんてとても、という人には、ちょっと辛いかもしれませんね。

CD Artwork © Decca Music Group Limited
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by jurassic_oyaji | 2009-09-02 20:52 | ピアノ | Comments(0)