おやぢの部屋2
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BRUCH/Arminius
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H. C. Begemann(Bas), M. Smallwood(Ten)
U. Eittinger(Alt),
諸岡亮子(Org)
Hermann Max/
Rheiner Kantorei
Göttinger Symphonie Orchester
CPO/777 453-2



マックス・ブルッフといえば、代表的な作品はヴァイオリン協奏曲ト短調、そしてチェロとオーケストラのための「コル・ニドライ」それから・・・あとは思い浮かびませんね。3つの交響曲や他の多くの協奏曲(ヴァイオリン協奏曲だけで3曲あります)などは、今では殆ど演奏されません。さらに、彼にはオペラやオラトリオなどの声楽作品もたくさんあるのですが、こちらはそんなものがあったことすら知られていないという寂しさです。そんな中で、彼が40代半ば、1877年に完成した「アルミニウス」というオラトリオがCDになりました。ヤカンの製造過程を音楽であらわしたもの・・・なわけはありませんね。いくら原料がアルミニウムだからといって。
「アルミニウス」というのは、紀元前後のあたりに実在した、ゲルマン人の一派ケルキス族の首長の名前です。ローマ帝国に支配されていたゲルマン人を解放した英雄として、ドイツではかなり有名な人のようです。「アルミニウス」というのはローマ帝国の公用語であるラテン語での読み方、ドイツ語的には「ヘルマン」と、確かに良く知られた名前になります。
彼の偉業のハイライトは、紀元9年に起こった「トイトブルクの森の戦い」です。ここでアルミニウス率いるケルキス族は、ローマの総司令官プブリウス・クインクティリアス・ウァルスの軍を破り、ゲルマン人に勝利をもたらしたのです。この戦いのあたりを記したヨーゼフ・クッパースという人の叙事詩を読んだブルッフは、それをテキストにして、このオラトリオを作りました。
この演奏が行われたのは、2009年の2月28日から3月2日の間、その場所はというと、実際にこの戦いの遺跡が博物館と公園になっているオスナブリュック近郊の「カルクリーゼ」というところです(ちなみに、「オスナブリュック」というのは、このレーベル「CPO」の本拠地ですね。「O」が「Osnabrück」の頭文字)。つまり、これはその戦いの「2,000周年記念」にちなんだイベントの一環として行われた演奏会の記録だったのです。それにしても「2,000周年」とは、壮大な時間感覚ですね。
曲全体は、「序」、「聖なる森の中で」、「蜂起」、「戦い」という4つの部分から成る、演奏時間が1時間半という大作です。アルミニウス役のバス歌手、ジークムント役のテノール、そして尼僧役のアルトという3人のソリストと合唱、それにオルガンの入ったオーケストラという大規模なものです。オルガンを、ハノーファー在住の諸岡さんが務めています。
ブルッフは1838年に生まれていますから、ブラームスより5つ年下ということになります。その作風も、ヴァイオリン協奏曲で分かるとおり、ブラームス同様あくまで伝統的なロマン派の流れをくむものです。したがって、このような物語の音楽としては、その時代の先端を行っていたワーグナー的なドラマティックな手法をとることはなく、殆どメンデルスゾーンあたりを思い起こさせるようなきっちりとした様式感を持った音楽に終始しています。さらに、おそらくブルッフはこのオラトリオを、4楽章の交響曲に見立てて作曲したのではないでしょうか。2曲目の「聖なる森の中で」は、アダージョ楽章に相当する穏やかな曲想となっていますが、その他の部分には力強い戦いを思わせるような情景が広がるという対比が見られます。
そんな音楽ですから、初めて聴いても容易に入っていける親しみやすさがあります。オトコ二人や、合唱のとことんハイテンションで力強い迫力には圧倒されますし、アルト・ソロのしっとりとした味にも和みます。なんと言っても、2,000年前の英雄を全力で盛り上げようとしている演奏メンバーのみならず、このイベントを企画したまわりの人たちの姿勢には、すごいものがあります。それが「ゲルマン民族」の力なのでしょうね。

CD Artwork © Classic Produktion Osnabrück
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by jurassic_oyaji | 2009-09-08 19:03 | 合唱 | Comments(0)