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Abbey Road
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The Beatles
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40年も前に作られたアルバムが「新譜」として登場、それが発売される日には徹夜でレコード店に並ぶ人が出たり、それがニュースとして紹介されたりと、なんだか異常とも思えるような大騒ぎになっています。そういう次元の騒がれ方には、敢えて背を向けていたいと思っていても、ものが「ビートルズのデジタル・リマスター」というのであれば、一応は聴いてみたいという気持ちを抑えることは出来ません。
そんな時にレファレンスとして聴くのはこのラストアルバム、サウンド的にも、そして音楽的にも最も充実していると誰しもが認めているアイテムです。さらに、個人的な体験に照らしても、なにしろこれが最初に買ったビートルズのアルバムだった、という点で、特別な思い入れは避けられません。ただ、その際に購入したのが、LPではなくオープンリール・テープだったというのは、かなり特異な体験となるはずです。パンは焼けませんが(それは「オーブンレンジ」)。
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これは、最初にLPが発売されたのと同じタイミングで、当時の「東芝音楽工業」から出たテープです。その15年後に出現するCDのように、「これからはテープの時代だ」とまで言われて盛り上がるかに見えたフォーマットですが、それは決してLPにとって代わることはありませんでした。さらに、今では再生するハードもありませんから、実際にその音を聴くことすら出来ません。しかし、それを聴いていた当時の記憶は鮮明に残っており、その時の音が、このアルバムの音として、刷り込まれてしまっていたのです。
ですから、その後LPを購入し、1984年頃には「東芝EMI」からCDも出たので、それも入手しました(これは、1987年に「公式」にCD化される前に、日本でだけCDのデモ用にどさくさ紛れに作られた物で、程なく廃盤になります)が、それらはテープの記憶とはかなり隔たりのある薄っぺらな音でした。
今回、「デジタル・リマスター」と聞いて思いだしたのが、「イエロー・サブマリン・ソングトラック」や、「ラブ」でした。このテクノロジーの可能性をまざまざと見せつけてくれるような、なんとも生々しいその音は、しかし、おそらく元の音以上に煌びやかな仕上がりになっていたために、ある種の危惧も抱かざるを得ませんでした。確かにそこまで出来ることは分かったが、それが果たして必要なことなのか、と。
しかし、今回のCDを聴いて、そんな杞憂は吹き飛びました。そこからは、まさに最初にテープで聴いて頭の中に住み着いていた音と全く変わらないものが聞こえてきたのです。それは、派手さはないものの、アナログ録音特有の芯のある、存在感に満ちた音でした。具体的にはボーカルや楽器のそれぞれのパートが、まさに「立体的」に迫ってくる物です。これは、このアルバムが、それまでのものとは違って「ステレオ」だけのためにミックスされたことと無関係ではないはずです(当時はまだステレオの装置が、特にポップスのユーザーの間では普及していなかったため、「サージェント・ペパー」ですらモノーラルバージョンもリリースされていました)。
しかし、「Here Comes the Sun」での繊細なアコギを聴くに付け、これがSACDであったなら、もしかしたらさらに繊細な、そう、まさにテープの音を超えるものが聴けるのではなかったのか、という思いは募ります。同じレーベルがピンク・フロイドをSACDで出していたことなど信じられないほど、今ではメジャー・レーベルがこのフォーマットを見捨ててしまっているのが、これほど悔やまれたことはありません。
購入したのは、左側にアップルロゴが入っている紙ジャケもどき、ブックレットにジャケ写の別テイクが載っているのは感動的です。しかし、本物の紙ジャケを欲しい人は、このアルバムが含まれていない法外な価格設定のモノ・ボックスを買わなければなりません。しかし、まんまと乗せられてそんなものが完売してしまうのですから、なんと情けない。

CD Artwork © EMI Records Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2009-09-12 23:29 | ポップス | Comments(0)