おやぢの部屋2
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Michael M. Kasper(Vc)
ENSEMBLE MODERN/EMCD-006



まるで、同じドイツのレーベルECMを思わせるようなモノトーンのジャケット、さらに、ブックレットもジャグァーが格納されているガレージからチェロケースを運び出し、どこかへと遠ざかるチェリストという、象徴的なモノクロの写真に飾られています。本家ECMが、そんなジャケットのこだわりとは裏腹にどんどん中身がつまらなくなっているのとは対照的に、こちらはとても充実したアルバムに仕上がっています。その写真にもきちんと意味があることも後に判明しますし。
これは、1980年からアンサンブル・モデルンに参加している(途中で空白期がありますが)チェリスト、ミヒャエル・カスパーの、ソロアルバムです。もちろん、このレーベルですからすべて「現代音楽」というカテゴリーの作品が並びます。
まず、最初の3曲は、20世紀半ばに作られた言ってみれば「古典」でしょうか。まるでその当時の激動(もしくは混沌)の音楽シーンを反映するかのような、特徴的な作品が続きます。最初はリゲティの「独奏チェロのためのソナタ」です。彼のまだハンガリー時代の作品、それこそコダーイの同じ楽器のための曲と同じ、民族的なテイストと、明白な調性感に支配された、なんとも懐かしい曲です。
その、ほんの数年後に作られたのが、ツィンマーマンの、やはりソロ・チェロのためのソナタ。これあたりが、このアルバムの中ではいわゆる「難解な現代音楽」の筆頭でしょうか。さまざまな特殊奏法を駆使して、考え抜かれた音列を奏でるものですが、今となってはそのひたむきさが逆に新鮮に感じられます。こんな時代もあったのだな、と。
そして、ラッヘンマンの「プレッション」という、さらに数年の時代を過ぎて作られた曲が続きます。このあたりから、テクノロジーと芸術との結びつきが避けられないようになってくる状況を象徴するような、マイクやアンプなしでは成り立たない音楽の萌芽が見られます。
そして、後半は、そのような、いずれは袋小路へ突き当たる流れとは一線を画した、現代へとつながる新たな潮流の音楽が始まります。1956年生まれのマイケル・ゴードンはまさにロック世代、彼の「インダストリー」という作品は、素材そのものは極めて単純なものの繰り返しという「ミニマル・ミュージック」の属性を感じさせますが、そこに、ロックならではのテクノロジーを積極的に導入しています。具体的には、音を歪ませる「ディストーション」というエフェクターを使って、チェロの音をまるでヘビメタのギンギンとしたギターのように変えてしまっているのです。それが徐々に盛り上がって、エンディングはまさにジミヘンのようなカタストロフィーが展開されます。あいにく、チェロはかなり高価ですから、ジミヘンのように楽器を燃やしたりは出来ませんが。
そんな騒乱が収まると、演奏家は何を考えたのか、チェロをどこかへ置いてきて、手拍子だけで演奏するというそれこそ「ミニマル」の極致、スティーヴ・ライヒの「クラッピング」を始めましたよ。もう一人の手拍子と2人して(4人だと「スワッピング」)ひたすら同じパターンをたたき続け、片方がほんの少しテンポを速くしてその「ズレ」を楽しむ、という、ひところ大流行した作品、というかパフォーマンスです。
そして、最後を締めるのが、タイトルにもなっているアルヴィン・ルシエの「RPM's」という曲です。1分あたりの回転数をあらわす単位のことですが、ここで聞こえてくるのは、自動車のエンジンをふかす音だけ、そう、ここで、チェリストの愛車であるさっきのジャグァーが登場することになるのです。カスパーのクレジットで「チェロ、手拍子、ガスペダル」とあったのは、このことだったのですね。彼はここではアクセルペダルを「演奏」していたのです。ほとんどジョン・ケージの世界、ここまでやられると、あまりの爽快さに笑わずにはいられません。

CD Artwork © Ensemble Modern Medien
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by jurassic_oyaji | 2009-09-14 20:10 | 現代音楽 | Comments(0)