おやぢの部屋2
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WAGNER, MOZART etc./Opera Arias
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Jonas Kaufmann(Ten)
Claudio Abbado/
Mahler Chamber Orchestra
DECCA/478 1463



カウフマンの新譜は、まずジャケットが秀逸でした。どこかで見たことのある風景だな、と思っていたのですが、これは有名なドイツロマン派の風景画家、カスパール・ダヴィッド・フリードリッヒの「霧海の上に佇むさすらい人」をもじったものではありませんか。
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オリジナルは後ろを向いていますが、振り向くとこんな顔、ということでしょうか(後ろ向きバージョンも、裏側にありました)。それだけではなく、ブックレットの中の写真までも、それぞれ「山上よりエルベ渓谷を望む」と「山頂の十字架」が元ネタという楽しい企画です。こういう、思わず力が抜けるようなセンスは大好きです。
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前作では、イタリアやフランスのオペラ・アリアも歌っていましたが、今回はすべてドイツ語で歌われているナンバーが集められています。その中でもワーグナーが半数を占めていて、いまのカウフマンが期待されているフィールドがうかがえます。それは、「待望久しい、ヘルデン・テノール」というカテゴリーなのでしょう。鎌倉、ですね(それは「エノデン」)。もっとも、最初に「ティート」で彼の魅力に気づかされたものとしては、モーツァルトのタミーノにも大いに期待が高まります。さらに、ベートーヴェンのフロレスタンもはずせませんし、全く聴いたことのないシューベルトのオペラからのアリア、というのも、そそられます。
ワーグナーの、特に「ローエングリン」あたりでは、フォークトなどが評価されているように、必ずしも「ヘルデン」でなくてもいいのでは、という風潮が高まりつつあります。カウフマンもそんな流れの影響でしょうか、「In fernem Land」ではいとも軽めの声で歌い始めます。しかし、それは盛り上げるための単なる小技、肝心なところでは朗々たるヘルデン声を披露してくれて、颯爽とした気分にさせてくれます。ほんと、この人の突き抜けるような声はまさにワーグナーにはうってつけ。
面白いのは、「ワルキューレ」のジークムントとジークリンデのデュエットである「Winterstürme wichen dem Wonnemond」の前半だけを完結させて(ワーグナー自身による終止)歌っていることです。リサイタルなどでは聴いたことがありますが、CDでは初めて、ちょっとこの終わり方には違和感がないわけではありませんが、カウフマンの魅力は満開です。
しかし、アバドの指揮によるマーラー室内オケが、少ない弦楽器をごまかしているのがいかにもミエミエの、およそワーグナーには似つかわしくない安っぽいサウンドなのにはがっかりさせられます。充分なプルトによるふっくらとした弦楽器に包まれてこそ、管楽器の咆哮が生きてくるのに、きっとなにか勘違いをしているのでしょう、少ない弦楽器でも表現(あるいは録音技術)でカバーできるのだとばかりの、やたらハイテンションの小手先だけの演奏には、うんざりしてしまいます。
モーツァルトでは、身の丈にあった音楽にはなっていますが、それでも、録音のせいもあるのでしょうが、管楽器の生々しい音には参ります。第1幕フィナーレの、「3つの門」のシーンあたりから始まって、フルートのオブリガートが付くナンバーまで続けるという、さっきのワーグナーとは逆の、カットして欲しいところの方が多いという変な選曲ですが、そのフルートがキーノイズまではっきり聞こえるほどのオンマイクなのですからね。そんなやかましいオケのせいかもしれません、ここでのカウフマンは明らかに力みすぎで、「ティート」で期待したような「力強いリリック」は、ついに聴くことは出来ませんでした。
初めて聴いたシューベルトの「フィエラブラス」とか「アルフォンソとエストレッラ」などという珍しいオペラの中の曲は、変な力みもなく、シューベルトならではのメロディの美しさを存分に味わえました。もう少しするとお目にかかれるリートが、楽しみになってきます。

CD Artwork © Decca Music Group Limited
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by jurassic_oyaji | 2009-09-20 23:34 | オペラ | Comments(0)