おやぢの部屋2
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BERG/Flute Mystery
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Emily Beynon(Fl)
Catherine Beynon(Hp)
Vlademir Ashkenazy/
Philharmonia Orchestra
2L/2L58SABD(BD, Hybrid SACD)



録音の良さでは定評のあるノルウェーのレーベル2Lから、ついにこんなパッケージが登場しました。常々「DXD」という、SACDの規格である「DSD」よりもさらに解像度の高い録音方式を用いていることを標榜しているこのレーベルの主宰者モーテン・リンドベリは、DSDでさえ「透明でない」と公式サイトで言い切っています。そこで彼が選んだメディアは、音声トラックの規格が24bit/96kHzという、ハイレゾリューション・リニアPCMであるブルーレイ・ディスク(BD)でした。寝台車ですね(それは「ブルートレイン」)。
この前著作をご紹介したCAMERATAレーベルの井坂さんも、どこかで「SACDには馴染めない」とか、「ネット配信では96kHzのリニアPCMを採用」といったような発言をなさっていましたし、Kさんという有名なレコーディング・エンジニアの方も「DSD96kHzPCMと同等」とおっしゃっていましたから、こういうプロの人たちの中ではDSDよりもハイレゾリューション・リニアPCMの方が「いい音」と認められているのでしょう。なんたって、ビートルズのデジタル・マスターがPro-Toolsによる192kHzPCMなのですからね。
ここでBDSACDを同梱しているのは、双方の音の違いを実際にリスナーに確かめてみて欲しいという思惑なのでしょうか。あいにくBDを聴ける環境にはありませんから、SACDでその高音質を味わい、BDだったらもっとすごい音なのだなあ、と、指をくわえることになるのでしょう。
アルバム自体は、フレード・ヨニー・ベルグ(というのは、メーカーのインフォにある表記。Bergは「ベリ」、あるいは「ベルイ」とはならないのでしょうか)という、1973年生まれのノルウェーの若手作曲家の作品集です。全部で5曲のオーケストラのための曲が収録されていて、そのうちの2曲でフルートがソロをとっています。その2曲がアシュケナージの指揮、残りの3曲は作曲家自身が指揮をしています。もちろん、マルチトラックのサラウンド仕様、ブックレットでは、それぞれの曲での楽器の並び方が示されています。
「フルート・ミステリー」というのは、2006年にゴールウェイによって初演された、本来はアルト・フルートのソロと弦楽合奏のための作品です。今回はソロのパートを普通のフルートとハープのために直したバージョン、ハープを演奏しているのはバイノンの妹キャサリンです。オケの弦楽器は、それぞれの奏者の姿までもが浮かんでくるような生々しい肌触り、それに絡むフルートとハープは、なんとも叙情的な、まさに個々の素のソノリテが試される過酷なフレーズを丹念に演奏しています。
バイノン自身のために作られた4つの楽章が連続して演奏される「フルート協奏曲第1番」では、冒頭にオルガンのペダル音が重低音で迫るという、恰好のオーディオ・ピース、後半でマニュアルのストップが聞こえてくると、それが生音ではなくサンプリングであることがはっきり分かるほどの解像度です。最後の楽章では、弦楽器のトレモロの中から立ち上ってくるグラスハーモニカの存在感などは、CDレイヤーでは決して味わうことの出来ないものです。その一つ前の、彼女のヴィルトゥオージティを存分に堪能できるスケルツォっぽい楽章が、全体に生ぬるい、というか、正直かったるい音楽の中にあって、確かなアクセントになっています。
バイノンがフルートを吹いていることから、ちょっと高価ですが買ってみたものですが、実際に聴いてみると確かにそこにはあえてBDで出したくなるような、SACDで聴いても充分ゾクゾク出来るほどの精緻なテクスチュアが体験できるものすごい世界がありました。しかし、まさにSACD、あるいはそれ以上のメディアでなければ体験できないほどの「音」に満ちた素晴らしいアルバムであるにもかかわらず、そこから聞こえてくる「音楽」は、なんと退屈で魅力に乏しいことでしょう。

SACD Artwork © Lindberg Lyd AS
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by jurassic_oyaji | 2009-09-28 20:28 | フルート | Comments(0)