おやぢの部屋2
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Dances et Divertissements
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Stephen Hough(Pf)
Berlin Philharmonic Wind Quintet
BIS/SACD-1532(hybrid SACD)



ベルリン・フィルのメンバーが結成した木管五重奏のアンサンブル、「ベルリン・フィル木管五重奏団(まんまですね)」は、首席奏者ではなく、2番やピッコロ、Esクラリネットなどをもっぱら担当している奏者が集まったグループです。1988年に結成されてから今まで一人としてメンバーが変わらずにやってきたという、オーケストラが母体にしてはかなり珍しい団体です。なんでも、彼らはベルリン・フィルのメンバーとしては初めての、永続的な木管五重奏団なのだそうです。そういえば、かつてゴールウェイなど首席級が集まった短命の「木五」も有りましたね。
ただ、なんと言ってもベルリン・フィルですから、メンバーはここでは2番でもよそへ行けば充分に首席として通用するような人ばかりです。現に、フルートのハーゼルやオーボエのヴィットマンは、一時期バイロイトのピットでは首席奏者を務めていました。
結成当時と今のメンバーの写真、変わっていないはずなのに、ずいぶん変わっていますね。なんせ20年ですからね。ハーゼルなどは、いったい何があったのでしょう。
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彼らはBISからコンスタントに「木五」、あるいはそれに他の楽器が加わったレパートリーをリリースしてきました。言ってみれば地味な、それこそ管楽器に関わっている人しか聴かないような曲目を、淡々と録音し続けて来たメンバーと、それを支えたレーベルの姿勢は貴重です。かつて、ベルリン・フィルとウィーン・フィルのメンバーで結成された「木五」が、人気取りのためについ編曲ものなどの安易な道へ流れていったのとは対照的な地道な歩みです。
今回は、ゲストにピアノのスティーヴン・ハフを迎えて、プーランクの六重奏曲などフランスの作品を演奏しています。アルバムタイトルは、このプーランクの曲の第2楽章と、アンリ・トマジの作品のタイトルから取られたものです。いかにも瀟洒なたたずまいのフランスの室内楽、それを、このドイツの団体はどのようにこなしているのでしょう。
まずは、現代のフルーティストのスクールの先駆けともいうべきポール・タファネルの木管五重奏曲です。きっちりとしたアンサンブルを要求される、フランスものにしては堅めの構成の曲、これは、もう20年も一緒にやっているメンバーにとってはまさに格好のレパートリーなのでしょう。トゥッティとソロの使い分けを見事に演じ、余裕すら感じられるものでした。最後の最後に登場するちょっとユーモラスな「仕掛け」も、しっかりサプライズらしい演出です。
プーランクの六重奏曲では、ピアノのハフのダイナミックな突っ込みに、他のメンバーがしっかり同調して、かなりのハイテンションな仕上がりです(「ハフ、ハフ」って)。ただ、迫力はあるものの、その分軽やかさがほんの少し稀薄になっているような印象は避けられません。かっちりしたアンサンブルを超えたところでの愉悦感(まさに「Divertissements」)が欲しいところでしょう。
ジョリヴェの「木管五重奏のためのセレナード」は、フランスものとはいってもこの作曲家ならではの不思議な旋法を中心とした音楽ですから、彼らの緻密なアプローチは良い方に作用しています。オーボエのヴィットマンのソロは、そんな非ヨーロッパ的な世界を見事にあらわしています。それを受けるフルートのハーゼルも、なかなかのものを聴かせてくれます。
最後は、トマジの「5つの世俗的な舞曲と神聖な舞曲」。それぞれの「Dance」を的確なリズム感で処理しているアンサンブルの能力には、まさに舌を巻く思いです。たった5つの楽器なのに、そこから生まれるダイナミック・レンジの広さは驚異的。
正直、今までのアルバムでは地味な印象があったものが、ここに来て一皮むけた華やかさのようなものも感じることが出来ました。やはり、気心が知れた仲間との切磋琢磨は、成熟のための最良の方法なのでしょう。

SACD Artwork © BIS Records AB
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by jurassic_oyaji | 2009-09-30 21:02 | 室内楽 | Comments(0)