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BRICCIALDI/Quattro Concerti per Flauto e Orchestra
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Ginevra Perucci(Fl)
I Virtuosi Italiani
BONGIOVANNI/GB 5159-2



ジューリオ・ブリッチャルディというイタリア人のラストネームは、フルートを吹く人でしたら誰でも知っているほど有名なものです。とは言っても、それはあいにくこのCDで聴くことが出来る協奏曲などの作曲家としてではなく、現在世界中で使われているフルートには必ず装備されている「ブリッチャルディ・キー」というメカニズムの名前によってのみ、知られているものです。現在のフルートが19世紀半ばにテオバルト・ベームによって改良されたものであることはよく知られていますが、それを手にした作曲家であり、卓越したフルーティストでもあったブリッチャルディは、B♭の音を簡単な運指で出すことが出来るような機構を考案します。それが「ブリッチャルディ・キー」と呼ばれる、左手親指で押さえるキーです。B♭の本来の運指は、左手と同時に右手の人差し指を使わなければなりません。しかし、親指をほんの少し動かすだけで作用するこのキーのお陰で、左手だけでB♭が出せるようになり、素早い音階なども非常に楽に演奏できるようになったのです。
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これに対抗して、本家のベームも同じような機能を持つ別なメカニズムを提唱したのですが、結局それは使われることはなく、この「ブリッチャルディ・キー」が、モダンフルートの標準装備として一般化し、今に至っています。
そんなブリッチャルディの作曲家としての側面は、今までほとんど知られることはありませんでした。わずかに、ゴールウェイあたりが、フルート・ソロの定番、「ローマの謝肉祭」を、よく知られているジュナンのものよりさらに技巧的な変奏曲に仕上げたピースを録音していたことによって、その華麗な世界を垣間見ることが出来ていただけです。
今回の4曲のフルート協奏曲は、作曲家が20年の間に書きためた、まさに当時のベル・カント・オペラ(彼はオペラも作っています)の匂いを色濃くたたえ、フルートの技法を最大限に発揮したゴージャスな作品たちです。楽譜が今まで出版されたことはなく、今回は自筆稿による世界初録音となります。4つの曲それぞれにしっかりとした個性が感じられ、あるものは華やかな、そしてあるものは陰鬱な趣をたたえています。思わず耳をそばだててしまうほどの期待を抱かせる力を持つ導入部で始まる第1楽章は、全く同じテイストを持ったままより叙情的な第2楽章へといつの間にか移行、一息おいて、なんともキャッチーな、ある時にはポロネーズのようなダンサブルなテーマを持つフィナーレへと続く、という、型通りの構成も魅力的です。全くフルートに縁のない人でも、おそらく一度聴いただけでその旋律の虜になってしまうほどの、それらは親しみやすい音楽です。
ここでソロを吹いているジネブラ・ペルッチは、録音当時はまだ19歳だったというほとんど少女(でもノーブラではありません)、しかし、その力強く伸びやかな音と、揺るぎのないテクニックは、もはや成熟の域に達しています。特に高音の明るい音色は、教えを受けたゴールウェイを彷彿とさせるものでした。超絶技巧の粋を尽くしたソロパートを、なんの齟齬もなくクリアしているのは、まさに爽快、ただ、あまりにきっちりと全ての音を吹ききっているのが、やや物足りなくも感じられるのも事実です。彼女の能力とセンスをもってすれば、ほんのちょっとしたきっかけで、さらにブリリアントな世界を表現出来るようになるのは、いとも簡単なことでしょう。
バックのオーケストラも、指揮者がいないにもかかわらず心憎いほどのサポートを見せています。さりげない合いの手の、なんと心地よいことでしょう。
このレーベル、いい加減な演奏と幼稚な録音であまり良い印象はなかったのですが、今回は録音は最高とは言えないまでも、内容はとても素晴らしいものでした。と言って油断をすると、ジャケットの肖像画が裏焼きだったりしますが。

CD Artwork © Bongiovanni
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by jurassic_oyaji | 2009-10-02 21:12 | フルート | Comments(2)
Commented by ブリッチャルディファン at 2010-02-07 18:44 x
ブリッチャルディのコンチェルトの楽譜を手に入れる手段はありませんか?出版されていないという事ですが、複数の楽団で演奏されているということは楽譜は存在しているのでしょうか。
どうしてもやりたいのです。
Commented by jurassic_oyaji at 2010-02-07 22:06
ブリッチャルディファンさん、コメントありがとうございます。
確かに、ムラマツあたりで検索してもコンチェルトの楽譜は見つかりませんね。多分、出版はされていないのでしょう。このCDもそうですが、自筆稿(マニュスクリプト)のコピーを使って演奏しているのでしょうね。お役に立てなくて、申しわけありません。