おやぢの部屋2
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MAHLER/Symphonie Nr.5
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Zubin Mehta/
Bayerisches Staatsorchester
FARAO/S 108052(hybrid SACD)



あのカラヤンほどの幅広いレパートリーを誇る指揮者でも、マーラーは殆ど演奏しなかったことでも分かるように、指揮者の中には必ずしもマーラーとは相性が良くない、という人はいるものです。今回のメータあたりも、この5番などはこれが3度目の録音となるのですから、しっかりレパートリーにはなっているのでしょうが、なぜか「マーラー指揮者」というイメージはあまり感じられないのではないでしょうか。
数多くのメジャー・オーケストラやオペラハウスを渡り歩いてきたメータですから、今までの録音はそれぞれ当時の手兵を用いての演奏です。最初の録音は1976年のロサンジェルス・フィル(DECCA)、2回目が1989年のニューヨーク・フィル(TELDEC)、そして、今回のバイエルン州立歌劇場管弦楽団です。メータがこのオペラハウスの音楽監督のポストをケント・ナガノに譲ったのが2006年ですから、これが録音された2008年にはもはやこのオーケストラとも離れていたのですが、このようなコンサートの機会はまだまだ続いているのでしょう。そう、このSACDは、その年の1215日のコンサートの模様を主たる音源にしている「ライブ録音」です。
この演奏、まず、とても穏やかな印象が与えられるものでした。それは、かなりゆったりとしたテンポ設定が一つの要因なのでしょう。トータルの演奏時間は7121秒(これは、ジャケットに表記されている時間から、最後に入っている拍手の時間を差し引いたものです)と、他の人の演奏時間に比べて確かにかなり長めになっています。ただ、ネット通販のサイトに彼の今までの録音での演奏時間があったのでそれを見てみると、最初のロス・フィルとの録音では65分とごく普通のテンポであったものが、次のニューヨーク・フィルでは69分と、年を追うごとにゆっくりになっていったことが分かります。中でも、第2楽章が1976年と2008年とでは2分以上も長くなっているのが目をひきます。
第1楽章は、まずそんな印象を最初に形作るもの、テンポとともに、トゥッティになっても決して荒々しくならずに、いとも上品な面持ちを保っていることに気づかされます。歌い方も極めて平静、その中では、情感をハイにするような作為的なルバートなどは殆ど見あたりません。第2楽章に移るときも、良くあるアタッカではなく充分な休みを置いてからの再スタート、決してあおり立てることのない落ち着いたテンポの中で、ショッキングな場面などまずありません。
第3楽章は、ホルンのどっしり腰の座った音色が印象的です。木管楽器がちょっと羽目を外しがちな部分でも、決して不必要にふざけることはかたく戒められているのでしょうか、それはあくまで「美しさ」の範疇の中での軽い諧謔でしかありません。
そして、第4楽章の「アダージェット」です。ここでもメータは、決して感情をあらわにしない平静さを旨としているようです。他の人がやれば冗談にしか聞こえないような表現ですが、メータの手にかかるとあくまで美しい弦楽器によって奏でられるゴージャスな音楽に変わります。
フィナーレもかなり遅いテンポですから、切迫感などはまずありません。フルート・ソロの難所からも、マーラーが企んだであろうサディスティックな面は感じられず、流れるようなアルペジオに酔いしれます。
そんな具合に、メータはこの曲の中にある「尖った」部分や「荒々しい」部分を見事に磨き上げて、とても美しく魅惑的なものに仕上げてくれました。それはそれで、マーラーの演奏の一つの形であるには違いありません。しかし、マーラーの曲から何かしら「狂気」のようなものを感じていたいと思っているコアなファンにとっては、それほど必要とは感じられない演奏なのかもしれません。
カラヤンがそうであったように、メータもまた「マーラー指揮者」と呼ばれることはめえたに(滅多に)ないでしょう。

SACD Artwork © Farao Classics
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by jurassic_oyaji | 2009-10-10 22:32 | オーケストラ | Comments(0)