おやぢの部屋2
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The Baroque Beatles Book
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Joshua Rifkin/
Baroque Ensemble of the Merseyside Kammermusikgesellschaft
NONESUCH/WPCS-12356(Dom.)



ちょっと前に「廃盤になっているリフキンの『ロ短調』を、オリジナルジャケットでタワーレコードあたりがリイシューしてくれないものでしょうか」と書いたことがありましたが、なんと来月には「デトゥール・コレクション」の新譜として発売されることになりましたよ。担当者がこのサイトを見ていたのかもしれませんね。
こちらはもっと前、おそらくリフキンにとっては初めての自分名義のアルバムとなるこの1965年の作品が、初CD化となりました。日本国内だけでも累計300万枚も売り上げたというビートルズのリマスター盤の余波を受けての、こんな超レアなアイテムの再発なのでしょうか。
ライナーによると、リフキンという人はジュリアードの学生だった頃にNONESUCHに出入りしていて、ライセンシングなどの仕事をやっていたそうですね。そこで、このレーベルを1964年に創設したジャック・ホルツマンが「ビートルズをバロックスタイルでカバーする」というアイディアを思いつき、それをリフキンに振ってきた、というのです。ここで興味深いのが、リフキンは最初に知り合い(大学の先輩!)であったピーター・シックリーを推薦していた、という事実です。こんなところでP.D.Q.バッハとリフキンとの接点があったとは。ただ、あいにくシックリーは都合が悪く、リフキン自身にお鉢が廻ってきたのですが、それは結果的にはまさに大正解だったことになるのでしょうね。おそらく、シックリーが編曲をしていたら、これほどまでにバロックとビートルズがしっくりいった結果は望めなかったのではないでしょうか。根っからの「ビートルマニア」であったリフキンには、最初からこの仕事を引き受けるべく運命が待っていたのです。
アルバムは、ヘンデルの「王宮の花火の音楽」のきっちりとしたパロディで始まります。「序曲」のネタは「I Want to Hold Your Hand」、中間部のフーガでのこのテーマの使い方などはとても堂に入ったもので、リフキンの才能をうかがい知ることが出来ます。バッハの教会カンタータのパロディまで登場するのもさすが、ですね。その中のアリアは「Help!」がネタ。ですから、それを歌っているハロルド・ブリーンスは「Helpentenor」なんですって。わかるでしょ?「Heldentenor」のもじりですね。こんなセンスはシックリーそっくりですね。演奏団体の名前だって、ビートルズが好きな人ならすぐ分かるはず。
この、世界初のビートルズのバロック風カバー、実際の録音は1965年の秋に始まっています。この中で使われている「Help!」が収録されている同名のアルバムがリリースされたのが、まさに同じ年の8月だったわけですから、その企画の反応の早さには驚かされます。「他社に先を越される前に」制作を敢行したホルツマンとリフキンの嗅覚には、恐れ入るしかありません。しかし、この中には、同じアルバムの中の作品で、オリジナルがすでにバロックのテイストをもっていて、現在ではそのような企画の定番となっている「Yesterday」は含まれてはいません。じつは、「Yesterday」はUKのオリジナル盤には入っていたものの、アメリカ盤はサントラ仕様の別編集だったためにアルバムには入ってはいませんでした。9月になってシングルが発売されますが、そこではB面扱い、おそらくリフキンたちにとってはまだカバーの対象とは認識されてはいなかったのでしょう。というか、ロックンロールとバロックというミスマッチをねらった企画では、この曲はちょっと浮いてしまいます。もしすでにこの曲が大ヒットしたあとだったら、アルバム自体の企画が出ていたかどうか、なんとも微妙なタイミングだったのですね。
そのリイシュー盤、盤面に「DDD」というあり得ない表記があるのは不思議なことですが、日本語版のライナーには「1981年のマタイ受難曲」と書くぐらいのおおらかさなのですから、別に驚くことはありません。

CD Artwork © Nonesuch Records Inc.
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by jurassic_oyaji | 2009-10-26 20:11 | ポップス | Comments(1)
Commented at 2010-01-07 01:56 x
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