おやぢの部屋2
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TCHAIKOVSKY/1812 Overture
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Valery Gergiev/
Mariinsky Orchestra, Soloists and Chorus
MARIINSKY/MAR0503(hybrid SACD)




最近は、既存のレコード会社に頼らないでオーケストラが自前でレーベルを立ち上げるのがブームになっていますね。ロンドン響、シカゴ響、コンセルトヘボウ、最近ではバイエルン放送響などでしょうか。お陰で、収入が2倍になったのだとか(「倍得るん」)。日本でも、何かと注目の山形響が最初に独自レーベルを作りましたね。嬉しいのは、それらのオケ・レーベルでは、ほとんどSACDの形でリリースしてくれているということです。いまいち普及が芳しくないSACDですが、このブームを契機に良さが見直されれば良いのですが。
そんな中で、ゲルギエフが音楽監督を務めるサンクト・ペテルブルクのマリインスキー劇場も、こんなレーベルを立ち上げました。ゲルギエフと言えば、すでにロンドン響とのコンビでLSO LIVEから多くのアルバムを出していますが、実はこのマリインスキーのレーベルも、ロンドン響と同じスタッフが関わっているのだそうです。あのハイレベルのLSOのノウハウが、こちらでも存分に発揮されていくことでしょう。
このアルバムは、品番でも分かる通りレーベルの3番目のアイテムです。前2作はショスタコーヴィチでしたが、ここに来てチャイコフスキー、「1812年序曲」と「スラヴ行進曲」は超有名曲ですが、その他に「戴冠式祝典行進曲」とか「デンマーク国歌による祝典序曲」、さらには「カンタータ『モスクワ』」などというレアな曲目がカップリングされているのは、ゲルギエフならではの選曲のセンスなのでしょうか。なにしろ「戴冠式~」やカンタータには作品番号すら付いていない、つまり出版されていないほどのレアものですからね。実際にはこれには統一したテーマがあって、それは「依頼によって作られた作品」というものです。つまり、何かの祝典などの際に、主催者からその目的のために頼まれた曲、というくくりなのでしょう。
ロンドン響とは違って、こちらはライブではなくセッション録音のようです。そして、録音会場が、2006年に出来たばかりのマリインスキーのコンサートホールです。ここは、あの豊田泰久さんが音響設計を担当したホールで、音の良さでは折り紙付きですから、期待が出来ますよ。
実際、「1812年」などは、とても深みのある重厚な音でした。録音のポリシーみたいなものはロンドン響と共通したものが感じられますが、こちらはやはり別の個性を持ったオケ、その違いはクッキリ音にあらわれています。そして、このホールのどっしり腰の据わった響きと相まって、まさに大地に根を下ろしたような壮大な音響が広がっていましたよ。大砲の音なども、昔TELARCの録音でびっくりしたものですが、そんなものを軽く超えるほどの迫力とリアリティです。
クレジットにもあるように、このレーベルはあくまで「マリインスキー劇場」のトータルのアーティストを聴かせるためのもののようです。そこで、「カンタータ」では劇場の合唱団とソリストが登場です。メゾのリュボフ・ソコロワとバリトンのアレクセイ・マルコフは、ともに若手のホープ、重みのある豊かな響きの持ち主です。そして、合唱がやはり重量級、ヴェルディなどを歌うときにはまた違うのでしょうが、チャイコフスキーとあっては彼らの「地」である非西欧のハーモニー感丸出しで、骨太の音楽を聴かせてくれています。これはいかにも盛り上がるための曲、最後の「スラバ!」という、ほとんど叫びに近い賛歌は、まさに宗教的なまでの高揚感を見せてくれます。
「戴冠式祝典行進曲」も「デンマーク国歌による祝典序曲」も、なんとも底の浅い音楽ですが、ゲルギエフの手にかかるとそんな高揚感に無条件に圧倒されてしまうものに変わります。たまにはどっぷり音の渦に浸って、頭の中を空っぽにするのも良いのではないでしょうか。

SACD Artwork © State Academic Mariinsky Theatre
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by jurassic_oyaji | 2009-10-28 19:36 | オーケストラ | Comments(0)