おやぢの部屋2
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TORMIS/Vision of Kalevala
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Ants Soots/
Estonian National Male Choir(RAM)
ALBA/NCD 35




このレーベルからは、2001年から、当時常任指揮者だったアンツ・ソーツの指揮によるエストニア国立男声合唱団の演奏によって、トルミスの男声合唱のための作品のアンソロジーが次々とリリースされています。それらは例えば「Vision of Estonia」というように「Vision」が頭に付くタイトルでまとめられていて、これが5枚目のものとなります。そもそも最初のアルバムタイトルが1989年に作られた曲のタイトルから取られているのですが、この曲はすでに男声合唱のレパートリーとして日本でも定着している名曲です。というか、ごく最近実際にこの曲を歌う機会があったのですがね。男声合唱だけでこれだけのアルバムが出来てしまうのですから、これからはさらに多くの作品が、男声合唱団の演奏会のステージを飾っていくことでしょう。
今回のアルバムでは「カレワラ」がテーマとなっている作品が集められています。「カレワラ」といえば、シベリウスの多くの作品でお馴染みの、フィンランドの一大叙事詩ですね。「ワイナモイネン」という老人が主人公、いしいひさいちも使っていますね(それは「モンナドンダイ」・・・わかんないだろうな)。フィンランドがロシアからの独立の際の拠り所としたのと同様に、同じようなロシアとのスタンスを持つエストニアでも、この「カレワラ」は重要な意味を持っているのでしょう。
アルバムの半分を占める、34分という長さを持つ、男声合唱曲としては異例の大作「『カレワラ』の第17章」は、その名の通り、「17章」全てをテキストにしたという、膨大なものです。ブックレットには、対訳がちっちゃい字で10ページにもわたって掲載されているのですから、すごいものです。フィンランドの民族楽器の「カンテレ」や、多くの打楽器などが加わって、最初は民謡風の5拍子のテーマが延々繰り返されるという「ヒーリング」っぽい曲調ですが、途中から全く感じが変わってアグレッシブなものになり、そんな長い時間も退屈することはありません。なにしろ、この合唱団の表現力の幅の広さといったら、しっとりと響き渡るとてもきれいな三和音の世界から、荒々しいトーン・クラスターの世界まで自由自在なのですからね。
そこで思い起こされるのが、このアルバムの中の「サンポの鋳造」と「鉄を呪え(鉄への呪い)」の男声バージョンを初録音していたスヴァンホルム・シンガーズのCDTOCCATA)です。並べて聴いてみると、とても同じ曲とは思えないほどの表現の違いが、両者の間にはあったのです。「鉄~」はトルミス自身がシャーマン・ドラムを叩いていたぐらいですから、TOCCATA盤では作曲者の意図がしっかり演奏者には伝えられてはいたのでしょうが、このALBA盤を聴いてしまうと、こちらの方がより深いところでトルミスの思いに通じているのでは、という思いが募ります。その最もはっきりした違いが、ソロを担当している人のキャラクターです。あちらはあくまで美しく「歌う」ことを心がけているようですが、こちらはなんとも品のない歌い方(というか、しゃべり方)に徹しています。その結果現れてくる「粗野さ」といったら、途方もないレベルに達したものなのですから。あちらが「ブレス」だとすれば、こちらは「パリンカ」でしょうか(意味不明)。この曲の後半に、2人のソロが3度平行でグリッサンド、その後合唱が半音ずつ和音を移動させるという場面があるのですが、そんな一見「前衛的」な作り方も、このソーツと「RAM」の手にかかると、きっちり「魂」を感じさせるものとして聴くことが出来るようになります。
トルミスのことを「音響主義」などと言ったアホな指揮者がいましたが、彼の作品はそんな上っ面だけのものではないことが、この演奏を聴けば如実に分かるのではないでしょうか。

CD Artwork © Alba Records Oy
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by jurassic_oyaji | 2009-10-30 23:36 | 合唱 | Comments(0)