おやぢの部屋2
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BACH/ Flute Contertos
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Magali Mosnier(Fl)
Michael Hofstetter/
Stuttgarter Kammerorchester
SONY/88697527002




タイトルはとりあえず「フルート協奏曲集」としてみましたが、実際は「ヨハン・セバスティアン・バッハによる、フルートとオーケストラのための最も美しいオリジナル作品と、編曲」という長ったらしいものです。それが、ドイツ語とフランス語だけで書かれていて、ライナーノーツもこの2カ国語だけ、本文には英語は全くないという潔い仕様です。ドイツのソニーの制作、アーティストはフランス人なのでこんな感じ、おそらくインターナショナルなマーケット向けではなかったのでしょう。
フルートのマガリ・モスニエは、パリの高等音楽院を曲がりなりにも(いえいえ、「首席で」ですよ)1999年に卒業したといいますから、現在は30代半ばでしょうか、すでにお子さんが2人いるそうです。2001年のランパル・フルートコンクールや、2004年のミュンヘン国際音楽コンクールで優勝したという華麗な経歴の持ち主で、2003年からはフランス国立フィルの首席フルート奏者を務めています。
タイトルにある「オリジナル作品」は、この中には「組曲第2番」の「ポロネーズ」と「バディネリ」、そしてカンタータ209番のシンフォニアしかありません。あとはすべて編曲ものです。しかも、ちょっと他では見られないようなユニークな「編曲」ばかり、なにしろ最初に入っているのが、「イタリア協奏曲」なのですからね。もちろん、これはオリジナルはチェンバロ曲、ヘ長調だったものをト長調に直して、新たにソロとオーケストラのためにパートを作り上げた、というものです。確かにアイディアは素晴らしいもので、特に真ん中のゆっくりとした楽章はソロがたっぷりと歌い上げるなかなか美しい仕上がりになっています。
曲が始まるとすぐ気が付くことですが、ソロフルートは全くビブラートをかけないで演奏しています。もちろん、彼女が使っているのは金製のモダン楽器なのですが、あえてバロック時代のトラヴェルソに似せてノン・ビブラートにしているのでしょう。これは、実はフルート奏者にとってはかなり難しいことで、日頃ほとんど無意識に付いてしまっているビブラートを取ることは、逆に想像以上のテクニックを必要とするものです。それだけの努力を払っているにもかかわらず、彼女のフルートからは「バロック」の匂いが全然漂ってこないのは、いったいなぜなのでしょう。特に真ん中のラルゴでは、せっかくの美しい音色まで犠牲にするような無理に抑えた吹き方になっているために、伸びやかさが犠牲になってしまっています。
フルート協奏曲として演奏されることがほぼ定着しているBWV1056のチェンバロ協奏曲(オリジナルはヴァイオリン協奏曲?)でも、事情は同じです。こういう試みは、CDではおそらく1995年のペトリ・アランコ(NAXOS)あたりが最初に行ったのでしょうが、それ以来単にビブラートを取りさえすればオリジナル楽器のような演奏が出来るのだと勘違いしている人は後を絶ちません。彼女もそんな一人、まわりのオーケストラは普通にビブラートをかけてロマンティックなフレージングで演奏しているのですから、そもそもなんにもなりませんし。
最後に入っているマタイ受難曲からのナンバー「Erbarme dich」は、アルトソロのパートを1オクターブ上げてフルートで吹いているのですが、それにからむオブリガートのヴァイオリンはたっぷりのビブラートで朗々と歌っているので、その対比は際立ちます。
しかし、もう1曲、なんとイ長調のフルートソナタをハ長調の協奏曲に作り替えた、というものでは、編曲者が別の人になっていて、オリジナルのトリオ・ソナタ(チェンバロの右手が1声部)の形を生かしてコンチェルト・グロッソ風に仕上げているために、編曲自体はとても楽しめます。
とは言っても、モダン楽器でバッハを演奏することの難しさだけが痛感されるアルバムでした。

CD Artwork © Sony Music Entertainment
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by jurassic_oyaji | 2009-11-29 22:41 | フルート | Comments(0)