おやぢの部屋2
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The Inaugural Concert
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Gustavo Dudamel/
Los Angeles Philharmonic
DG/00440 073 4531(DVD)




ほんの2ヶ月前、10月8日にロスアンジェルスのウォルト・ディズニー・コンサートホールで開催されたロスアンジェルス・フィルの新しい音楽監督、グスタヴォ・ドゥダメルの就任記念演奏会の映像が、もうDVDになって世界中で発売されています。ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートなども確か2週間ぐらいで世に出ていたはずですが、あれは早すぎ、というか、別格のイベントですから仕方がありません。しかし、たかが一人の若者がオーケストラのシェフに就任しただけのことなのにこれだけの扱いを受けるというのですから、これはほとんど「異常」。しかも、映像ディレクターが、その「ニューイヤー」を担当しているブライアン・ラージというのですから、どんだけ破格の扱いなのでしょう。確かに28歳の若さでアメリカのメジャー・オーケストラの音楽監督とはすごいことかもしれませんが、ズビン・メータがこの同じオーケストラの同じポストを手に入れたのは、確か26歳の時ではなかったでしょうかね。
客席を見ると、ハリウッドという土地柄なのでしょう、この演奏会のための委嘱作品を作ったジョン・アダムスとならんで、トム・ハンクスの姿が見られるように、そうそうたるセレブが招かれています。しかも、まるで「アカデミー賞」や「グラミー賞」の授賞式みたいに、客席の聴衆はすべてタキシードにイヴニング・ドレスという「正装」というのですから、すごいものです。ステージ上方に陣取ったユニークなデザインのオルガンや、豊田さんの音響設計によるホール内の美しい曲面と、このファッションは見事なマッチングを見せています。
そこに登場するドゥダメルくんも、ちょっと前までの田舎から出てきた元気な若者、といったイメージが見事に一新、まるでハリウッド・スターのジョン・トラボルタのような風貌に感じられるのは、単なる偶然でしょうか。
まず演奏されたのが、そのアダムスの「City Noir」という、3楽章の「交響曲」です。演奏時間は30分、ジャズのイディオムをふんだんに用いた、「第1楽章」あたりはバーンスタインを思わせるような複雑なリズムの曲です。まるで、このオーケストラの技量を試すかのような難曲ですが、ピッコロのおばちゃんのように、それを笑いながら軽快に吹いているプレイヤーは素敵です。
フルートの首席は、なんだかどこかで見たことのある人。たしか、シカゴ交響楽団の首席奏者だったはずのマテュー・デュフォーではないですか。公式サイトには「2008年に首席に指名」とありますが、シカゴのサイトでもしっかり首席奏者として紹介されていますよ。シカゴの首席をやって、しかご(しかも)ロス・フィルの首席を務めるなんて、すごいですね。このDVDの全体的にメリハリのない録音状態の中で、彼の音だけはひときわ目立って聞こえます。確かにこれだけ存在感のあるフルーティストは、他にはいないのかもしれませんね。
メインのプログラムはマーラーの「巨人」。この曲を操るドゥダメルは、百戦錬磨のロス・フィルのメンバーに対して、妥協のない自分の音楽を提示しているように見えます。特に、第2楽章のレントラー風の三拍子の舞曲の扱いはとても巧みなものでした。フィナーレも、決して煽ることはなく、実際には抑え気味に進めていくのに、そこからは巧まずして高揚感を発散させているのですから、すごいものです。確かに、彼にはオーケストラのメンバーを心から納得させられるだけの「カリスマ性」があるのでしょう。
演奏が終わるとスタンディング・オヴェーション、そして天井からは紙吹雪が舞い落ちてきます。新しいスターを迎えたこのオーケストラの喜びを、それこそ世界中に知らしめるようなそんな演出はいかにもアメリカ的、そこまでしなくても、という思いがわき上がるかもしれません。しかし、本編のあとのエンドロールでは、バックステージで引き上げてきたメンバーに次々にハグされている指揮者の姿が。どうやら、この「お祭り」には結構「本気」が入っていたみたいですよ。

DVD Artwork © Deutsche Grammophon GmbH
by jurassic_oyaji | 2009-12-12 22:37 | オーケストラ | Comments(0)