おやぢの部屋2
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クリスマス・イブ
 クリスマス一色の世の中ですが、それを盛り上げているのがクリスマスソングですね。古典的な「ジングルベル」や「ホワイト・クリスマス」を始めとして、さまざまなジャンルのこの時期にちなんだ曲が、どこへ行っても聞こえてきます。
 山下達郎の「クリスマス・イブ」も、そんな曲の一つ。FMなどでは、この時期1日1回は聞こえてくるのではないでしょうか。この曲が作られたのは1983年といいますから、もう四半世紀以上の歴史を持っているのですね。こうなるともはや「古典」の仲間入りです。ただ、実際に「大ヒット」となったのは、1989年にCMに使われて以来のことだということですが。実は、この曲を作ったころに達郎がDJを務めていたラジオ番組(なんとNHKFM)を聴いていたのですが、曲が出来た直後にラジオで流したときに、達郎が言ったことを、今でもおぼえています。今では、誰が聴いても、この曲はパッヘルベルの「カノン」を下敷きにしたものだと分かりますが、実はその頃は「カノン」はそれほど有名な曲ではありませんでした。達郎は当時RVCというレコード会社の専属アーティストだったのですが、彼は「カノン」を聴くときに同じレコード会社が販売していたERATOのパイヤールの指揮の演奏のCDを、会社の人からもらって聴いたというのです。彼の口から「パイヤール」などという人名が出てきたのが、かなり新鮮な気がしました。
 「カノン」からの引用は、間奏のア・カペラの部分のコーラスでベタにあらわれますが、なによりもAメロのコード進行がまさに「カノン」と同じものなのですよね。ニ長調の「カノン」は、バスに同じ音型が執拗に繰り返されるという「パッサカリア」の形式をとっています。その音型は、ハ長調に直すと「ド・ソ・ラ・ミ・ファ・ド・ファ・ソ」というものです。ちなみにそれに乗った和声をコードネームであらわすと、「C-G7-Am-Em-F-C(Em)-Dm-G7」となります。これは、ベースが「ド・シ・ラ・ソ・ファ・ミ・レ・ソ」というように、音階にしたがって下降するという分かりやすい定型コード(「クリシェ」と言います)の形です。
 達郎は、これに従ってメロディを作りますが、そこで「パッヘルベル」になってしまわないためのある工夫を施すことになります。それぞれのコードの上の歌詞とメロディは、こんな風になっています(オリジナルはイ長調ですが、分かりやすいようにハ長調で)。

  • C:雨は夜更け(ミミミド)
  • G7:過ぎーに(レーレ)
  • Am:雪へと変わ(ドドドドレミ)
  • Em:るだーろ(シーシ)
  • F(Fmaj7):Silent(ミミー)
  • Em(Em7):Night(レ)
  • Dm(Dm9):Holy(ミミー)
  • G7:Night(レ)

 赤い字は倚音ですから、前半のメロディは「ミ・レ・ド・シ」と見事にこの流れるようなコードに従っています。ところが、「Silent Night Holy Night」の部分になったとたん、「ラ・ソ・ファ」とはならずに「ミ・レ・ミ」というとんでもないメロディに変わります。パッヘルベルを聴き慣れた耳には、これはとても違和感のある跳躍です。事実、この部分のコードからすると、最初の「ミ」はF Major 7thの7音、次の「レ」はE Minor 7thの7音、そして次の「ミ」はD Minor 9thの9音という、それぞれかなり「ジャジー」な響きを担っている音になっているのです。このあたりが達郎の作曲技法のキモ、18世紀のコード進行を借りていながら、出来上がったものは見事に20世紀の響きを持っているのですね。
 そのパッヘルベルの「カノン」ですが、もともとはクリスマスとはなんの関係もない曲だったはずです。それが、達郎のクリスマスソングに転用されて、それが大ヒットしたために、「カノン」自身もクリスマスの曲のように扱われるようになってしまったというのは、なんだか愉快な感じですね。「名曲」なんて、そんなものです。
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by jurassic_oyaji | 2009-12-23 22:34 | 禁断 | Comments(0)