おやぢの部屋2
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BERLIOZ/Symphonie Fantastique
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Jos van Immerseel/
Anima Eterna Brugge
ZIG ZAG/ZZT 100101




ベルリオーズの「幻想」を初めてオリジナル楽器で演奏したのは、たぶんノリントンだったのでしょう。少なくとも録音に関しては、彼の1988年のEMIへのものが「世界初」と言われています。それはかなりのセンセーショナルな出来事だったはずですが、今聴き直してみると、演奏そのものは至極まっとうなもののように感じられてしまいます。その後1991年にガーディナーが行った録音(PHILIPS)は、弦楽器を大人数にしたり、ハープなどは6台も使うという大編成に加えて、楽譜にはない「セルパン」を、オフィクレイドの補強(あるいは、ビジュアル的な効果?)として加えるなど、積極的なアプローチが随所に見られて、なかなか興味深いものでした。
この二人の録音によって「幻想」もついにオリジナル楽器で演奏される時代が、と思われたのですが、なぜか彼らに続くものは、CDのリリースに限っては長らく現れませんでした。そんな時に、新録音が17年ぶりに登場です。
このインマゼールの録音、レコード会社にとっても恰好のアイテムだったのでしょう。変わりばえのしない最近のこの曲の録音の中では久しぶりの「変わり種」、幅広い層にアピールを、と、国内盤仕様でライナーの日本語訳を添付して発売してくれました。そのライナー、インマゼール自身の長~いコメントに加えて、キーとなる楽器の演奏家の言葉まで掲載されているかなりの文字数のものですから、それが日本語で読めるのはありがたいことです。
その中で、ひときわ注目をひいたのが、「鐘」に関するインマゼールの解釈です。楽譜には元々「鐘、またはピアノ」と記されていますし、そもそも楽譜の指定通りの「低い」音程の鐘だと、その重さは数トンから数十トンになってしまい、とても実際にステージで使うことなど出来ないそうなのですね。その他、さまざまな傍証を引き合いに出して、「ベルリオーズが本物の鐘を用いたということはあり得ない」と断言しています。ほんとかね、と思ってしまいますね。
しかし、実際にその部分、つまり、第5楽章の「Dies irae」のあたりを聴いてみると、2台のエラール製のピアノによって演奏された「鐘の音」は、指定通りの充分に低い音によって見事に不気味さを感じられるものになっていました。これを聴いてしまうと、普通に演奏される「小さな鐘」の音などは、殆ど冗談にしか聞こえなくなってしまうかもしれませんね。たしかにこれは、国内盤のタスキにあるように「目から鱗」の発想でした。テーマを演奏するオフィクレイドとファゴット(いや、バッソンですね)が混じり合った独特の不気味さが、このピアノによってさらにはっきりしてきます。
楽器編成は、ガーディナーなどに比べるとずっと少なめ、ヴァイオリンが9本ずつ、以下の弦楽器はすべて6本というものです。その分、管楽器の音がクリアに聞こえてきて、オリジナル楽器ならではの鄙びた音色が存分に味わえます。ただ、なぜか第2楽章で加わっているオプションのコルネット・パートが、殆ど聞こえてこないのですよ。この楽器は、ブックレットに写真入りで載っているホルンを小さくしたようなとても珍しいものです。どんな録音でも、この部分でコルネットが入っていればすぐ分かるはずなのに、それがよっぽど注意しない限り聞こえないというのは、楽器のせいなのか、ミキサーの耳のせいなのか。
そんな風に他人のせいには出来ないのが、インマゼールの指揮ぶりです。ライナーを読む限り、必要なリサーチは充分すぎるほど行っているのでしょうが、そこから出てくる「音楽」が、なんともキレのない、退屈なものになってしまっているのですね。聞こえてくるのは空虚な「音」だけ、その中に込めて欲しい「情熱」や「悪夢」が、全く伝わってこないのですよ。そういえば、今まで彼のCDを聴いたあとには、常にそんな虚しい思いを味わっていたことを、思い出しました。

CD Artwork © Zig-Zag Territoires
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by jurassic_oyaji | 2010-01-08 22:01 | オーケストラ | Comments(0)