おやぢの部屋2
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WAGNER/Götterdämmerung



Lothar Zagrosek/
Staatopernchor Stuttgart
Staatsorchester Stuttgart
TDK/TDBA-0057(DVD)



シュトゥットガルト州立劇場の「指環」、ついに「第3夜(ご存じでしょうが、この作品は序夜+3夜という数え方をします)」、「神々の黄昏」の登場です。「おやぢ」をはじめたときには、まさか「指環」全曲の映像のレビューを書けるようになるなど、考えてもみませんでした。それというのも、この数年、DVDが映像メディアとしてまさに成熟したものになってきたおかげ。そして、それに伴って、オペラなどのソフトが潤沢に供給され、スタンダードなレパートリーだけではなく、このような最先端のプロダクションまでが、日常的にリリースされるようになったのです。「演出の時代」と言われて久しい昨今のオペラ界、センセーションを起こした演出が、ほとんどタイムラグのない状態で、このように手軽に映像で実際に味わえるようになれば、その傾向はますます助長されることでしょう。
ここで「神々」の演出を手がけたのは、ペーター・コンヴィチュニーという「大物」です。以前彼の演出で非常に印象的だったのが、「トリスタン」、このタイトル・ロールが初めてステージに登場したとき、彼はなんとシェービング・クリームを顔に塗りたくって、ひげそりの真っ最中だったのです。そんなオマヌケな設定から、この場面でのトリスタンのイゾルデに対する無関心さは、非常に良く伝わってきます。そんな具合に、彼の演出の根底にあるのは、卑近な「わかりやすさ」、それによって、観客の関心をドラマに引きずり込む手法には、卓越したものがあります。
「神々」でも、その「わかりやすさ」の仕掛けは際だっています。一番笑えるのが、ジークフリートがグンターに扮してブリュンヒルデを手込めにしようとする場面、状況を理解したブリュンヒルデは、もうなすがままになるしかないと、着ていたネグリジェの裾をまくり上げ、自らぱんてぃをずりおろすのです。その脱いだぱんてぃを足首に巻き付けてよろよろ歩く姿の、なんと屈辱的なことでしょう。これが、いずれはジークフリートのたくらみだと知って、復讐を果たすためにハーゲンに弱点を教えるという動機なのだとしたら、これほど「わかりやすい」仕掛けもありません。ただ、演出に関しては様々な見方がありますから、各々の理解の範囲内で楽しめばよいことです。一つの答えを得ることは、演出家の本意ではないはずですから。
演奏に関しては、この劇場の合唱団のとてつもない力には驚いてしまいました。オペラの合唱に細かい表情を求めるのはそもそも無理があると普通は思われていますが、この合唱を聴いてしまうと、そんなものはただの言い訳にしか聞こえなくなってしまいます。そんなことを言っていていいわけがない、と思えるほど、この合唱団の作り出す表現の幅は膨大、あのピアニシモのすごさなどは、コンサート専門の合唱団だって、ちょっと出すことは出来ないほどです。
ソリストでは、同じプロダクションの「ワルキューレ」でフリッカを歌っていた、ヴァルトラウテ役のティチーナ・ヴォーンが出色です。神々の窮状をブリュンヒルデに伝えるためにやってくる、その陰からの声からして、ひときわ印象的なものです。そのブリュンヒルデを演じるルアナ・デヴォルは、まさに「怪演」、この役を「神の娘」ではなく、生身の「年増の女」ととらえたコンヴィチュニーのプランにこれほど合致したキャラクターは、実年齢でも60歳を超えているこのベテランをおいて他にはないと思えるほどです。
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by jurassic_oyaji | 2005-04-03 23:15 | オペラ | Comments(2)
Commented by dognorah at 2005-04-28 07:57
すばらしい解説、頭が下がります。このDVDぜひ入手してみたいと思います。
Commented by jurassic_oyaji at 2005-04-28 19:49
たくさんのコメントとTBありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。