おやぢの部屋2
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BACH/Matthäus-Passion
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Johannes Chum(Ev), Hanno Müllert-Brachmann(Je)
Christina Landshamer(Sop), Marie-Claude Chappuis(Alt)
Maximillian Schmitt(Ten), Thomas Quasthoff(Bas)
Riccardo Chailly/Gewandhausorchester
Thomanerchor Leipzig, Tölzer Knabenchor
DECCA/478 2194




2009年の4月に録音された最新の「マタイ」は、なんとリッカルド・シャイーがゲヴァントハウス管弦楽団を指揮したという、バリバリのモダン楽器のチームの演奏でした。メンゲルベルクの時代ならいざ知らず、誰しもがオリジナル楽器というものを知ってしまった今の時代に、この曲をモダン・オーケストラが演奏するのはかなり勇気の要ることです。あるいは、シャイーには、そんな世評に一矢を報いるだけの勝算があったのでしょうか。
そのヒントは、このCDの枚数にあらわれています。ふつうこの曲を収録するためにはCDだったら3枚は必要、しかし、このシャイーの演奏はなんと2枚に収まってしまっていますよ(トータル・タイムが16010秒)。今まで聴いた中で最も短かったのが、同じく2枚組み、マクリーシュ盤16132秒なのですから、これはもしかしたら世界最速の「マタイ」なのではないでしょうか。しかも、マクリーシュ盤は「OVPP」という最新スペックを採用、人数が少ないからこそ出来うるその軽やかなテンポには度肝を抜かれた記憶がありますから、それよりも早いテンポ設定というだけで、なにか期待出来そうな予感が。
果たせるかな、第1曲目の合唱は、まさにモダン・オケ陣営にしてはとんでもない早さでした。エヴァンゲリストによるレシタティーヴォはモダンであろうがオリジナルであろうがそんなにテンポが変わることはありませんが、アリアなどもあまりもたつかない歌手たちの功績もあって、かなり快適に運ばれます。しかし、中には13番のソプラノのアリア「Ich will dir mein Herz schenken」のように、イントロのオーボエ・ダモーレによるデュエットがあまりに速すぎて歌手がそれに合わせられないような場面も見られましたね(合わせてたもーれ)。あ、これはゲヴァントハウスでのライブ録音、こんなことも起こります。
テンポ感はともかく、ラントシャマー(ソプラノ)、シャピュイ(アルト)、シュミット(テノール)あたりの歌は、まさにオリジナル楽器の世界でも十分に通用するしっかりとした時代様式を持ったものでした。特にシャピュイは、必要以上に暗くならない音色がとても魅力的です。ただ、バスのクヴァストホフだけは、他の人から浮いてしまっているような「臭さ」が、ちょっと気になります。
そこまでの違和感を、この大御所がもたらしているのは、オーケストラがバッハ時代の様式を取り入れようと努力、ほぼ完璧にそれを成し遂げていたせいもあります。そう、このライプツィヒのオーケストラは、単にテンポだけではなく、奏法や表現まで18世紀のライプツィヒを再現すべく、普段のレパートリーに向けるものとは異なる努力をひたすら行っていたのです。弦楽器は完全なノン・ビブラート、第2部の初めのあたり、39番のアリアのオブリガートなどは、音色といいフレージングといいまるでバロック・ヴァイオリンを聴いているような錯覚に陥るほどです。フルートだって負けてはいません。49番の「Aus Liebe will mein Heiland sterben」という、最高に美しいソプラノのアリアのオブリガートでは、これもトラヴェルソではないかと思えるほどの完璧なノン・ビブラートとフレージング、よくぞここまで、という感じです。
もちろん、シャイーたちがここで試みたのは、単にバロック時代の様式を模倣したことだけではなかったはずです。例えばコラールでの、まさに息詰まるほどの切迫した「モダン」な表現などは、そんなある意味ストイックな試みとは見事な対比を示して、思わず興奮を抱かずにはおかないものです。それを成し遂げた2つの合唱団も立派、ここではトマス教会合唱団と、テルツ少年合唱団の2つの団体がクレジットされていますが、それはどのような分担だったのでしょう。テルツはリピエーノだけだったのでは、という気もするのですが、ブックレットからの情報では、それは決して分かりません。

CD Artwork © Decca Music Group Limited
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by jurassic_oyaji | 2010-02-08 20:14 | 合唱 | Comments(0)