おやぢの部屋2
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MOZART/Arias for Male Soprano
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Michael Maniaci(Sop)
Martin Pearlmen/
Boston Baroque
TELARC/TEL-31827-02




久しぶりにTELARCCDを手にしたら、品番の付け方がいつの間にか変わっていましたね。以前は「CD-80・・・」といった最初からのカタログからつながっている連番、しかも、安くなって再発されたときにもその品番が変わらない、というものだったのですが、これを見るとなんだか電話番号みたいですね。これは、TELARCCONCORDというジャズの大手レーベルの傘下に入ったこととの関連なのでしょうか。いや、それは確か2005年のことですから、なぜ今頃になって・・・という気がしますが。こういう業界の仕組みは、我々「一般人」にはなかなか分からないところがあります。でも、品番一つ取ってみても、かつてはまさに「手作り」感覚で優秀な録音のレコードを作っていたレーベル、という親密なイメージからははるかに遠いところへ行ってしまったな、と感じてしまうのは、単なる考えすぎでしょうか。
実際、このレーベルはもはや「優秀な録音」というところからも、はるかに遠いところにあるのでは、とは、最近の看板アーティスト(なにしろ、「グラミー賞」の常連ですから)であるボストン・バロックの一連のアルバムを聴いても、痛切に感じられてしまいます。なにか焦点の定まらないもやもやとした雰囲気の中にある音、そこからは、オリジナル楽器特有の鋭い響きは殆ど感じることは出来ません。あるいは、アメリカに於けるこういうジャンルの音楽への好みが、そのような音に反映されているのでしょうか。
そんな、20枚を超える彼らのこのレーベルへのアルバムの最新作は、マイケル・マニアチというオタク(それは「マニアック」)をフィーチャーした「男性ソプラノのためのモーツァルトのアリア集」です。この「邦題」、あえて「男声ソプラノ」と表記しなかった日本の代理店の微妙な感覚は、痛いほど伝わってきますね。「男声」の歌手が、ファルセットを駆使してソプラノの音域を歌う、というのではなく、あくまで声自体が「ソプラノ」である「男性」なのですよ。そう、それは少年の頃に生殖器を切り取って、男性ホルモンの分泌を阻止した結果、決して変声期を迎えることがなくなった大人の「男性」歌手、カストラートのことなのです。もちろん、モーツァルトの時代には華々しい活躍をしていたそのような「男性」はもはや存在してはいませんから、ここで歌っているマニアチという人は、生まれながらにしてそのような特殊な声を獲得していたのでしょうね。話には聞いていた「男性の力強さを備えた、輝かしい女声」が、実際に体験できるのでしょうか。
しかし、まず、録音自体が今までのボストン・バロックで聴かれたいかにも鈍いものであったことで、彼の声がなんともフワフワした弱々しいものとして聞こえてきた時点で、軽い失望感を抱くことになります。それは、例えばドミニク・ヴィスのような突き抜ける声をある程度期待していたことへの反動なのかもしれませんが、それは「力強さ」などはどこにも感じることは出来ないものでした。
しかし、カストラートが最も得意としたはずの華々しいコロラトゥーラのキレの良さに関しては、いかに録音が悪くても評価は出来るはずです。ここでの彼の「技」は、どうひいき目に見ても「華々しさ」にはほど遠いもののように思えます。「ティト」でのセストのアリア「Parto, ma tu ben mio」などは、さんざん聴いた「女性」のカサロヴァの方が「華々しさ」でも「力強さ」でも数段勝っています。オブリガートのクラリネットも、なんだかへなちょこですし。
彼の声につきまとうなんともはかなげなビブラートは、彼の歌から「力強さ」が感じられない最大の要因なのではないでしょうか。いつだったか、まだ生きていたカストラートの歌を録音したものを聴いたことがありますが、そこで味わったのがちょうどこんな感じ、もしかしたら、マニアチは別の意味で真実のカストラートの姿を現代に蘇らせていたのかもしれませんね。

CD Artwork © Concord Music Group, Inc.
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by jurassic_oyaji | 2010-02-10 19:30 | オペラ | Comments(0)