おやぢの部屋2
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MADERNA/Complete Works for Orchestra Vol.1, Vol.2
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Arturo Tamayo/
hr-Sinfonieorchester
NEOS/NEOS 10933・10934(hybrid SACD)



1920年生まれ、それこそブーレーズなどとともに「現代音楽」の最先端を走っていたイタリアの作曲家、ブルーノ・マデルナの「オーケストラのための完全作品集」です。作曲年代順に収録されていて、「Vol.1」が1948年から1953年まで、「Vol.2」が1954年から1966年までの作品となっています。それ以後、1973年に亡くなるまでオーケストラ曲は作っていたはずですので、いずれ「Vol.3」なども出てくるのでしょうか。確かに、この中には、少なからずあったはずのオーボエ独奏を伴った作品が全く見あたりません。
その代わりと言ってはなんですが、フルート・ソロがフィーチャーされたものが3曲も入っていますよ。もちろん、これらの作品は当時の音楽シーンでそのような新作の演奏を一手に引き受けていた伝説的なフルーティスト、セヴェリーノ・ガッツェローニのために作られたものです。以前ご紹介した同じ作曲家の「ドン・ペルリンプリン」というオペラでもフルートが大活躍していましたが、これももちろんガッツェローニの演奏を想定して作られたものなのでしょう。
このフルート・ソロを、ここで演奏している「hr」、つまりヘッセン放送協会の専属オーケストラ「hr交響楽団」(いや、かつては「フランクフルト放送交響楽団」と名乗っていたオーケストラ、ホルンだけのオケではありません)の3人の団員がそれぞれ担当している、というのが興味をひきます。そのうちの2人はもちろん首席奏者ですが、もう一人は主にピッコロを吹いている2番吹き、そのようなポストでも、ガッツェローニが吹いていたパートを任せられる、というのがすごいところです。
その人が、ジャケットの写真にも登場している、まるでジャズ・プレイヤーのような風貌の(実際、ジャズとのコラボレーションも行っているそうです)アフリカ系アメリカ人、タデウス・ワトソンです。彼の担当は、1954年の作品「フルート協奏曲」です。8分程度の短い曲で、この時期ぐらいまではまだこの作曲家が大切にしていたはずのリリシズムが存分に味わえるものです。その分、テクニック的にはそれほど難しいという感じはありません。きちんと「ソノリテ」を勉強していればなんなく吹けるはずの曲ですが、ワトソンは意外と苦戦しているのが、ちょっとかわいそう。
首席奏者のセバスティアン・ウィティバーという人が吹いているのが、もう少し後、1964年に作られたソプラノとフルートとオーケストラのための「Aria」です。これは、同じ時期に作られた、フリードリッヒ・ヘルダーリンのテキストによる「Hyperion」というオペラの、いわば「スピンオフ」のような作品なのだそうです。ここでウィティバーが演奏しているのは普通のフルートより1オクターブ低い音域のバス・フルートという楽器です。ソプラノ・ソロに絡むだけではなく、かなり長いカデンツァもあって、この楽器のハスキーな音色を存分に楽しめます。技巧もとても滑らか、やはり「格」が違います。
同じく「Hyperion」からのスピンオフ、フルートとオーケストラのための「Dimensioni III」を演奏しているのがもう一人の首席、スペイン出身の女性フルート奏者、クララ・アンドラーダ・デ・ラ・カッレです。これは、とてつもない技巧と音楽性が要求されるソロパートですが、彼女は、もしかしたら初演者ガッツェローニなどははるかにしのぐほどの冴えを見せているのかもしれません。特に、伸びやかな音色は素晴らしいものです。
そんな、プレイヤーひとりひとりの演奏上の特質までが手に取るように分かるのは、SACDならではの卓越した録音によるところも大きいはずです。同時に、この録音が伝えているのは、タマヨに指揮されたオーケストラのしなやかで肌触りの良い音色です。特に、「Vol.1」で顕著に見られるメロディの美しさをまだ信じていた頃のマデルナの特質が、ここからはいとも素直に伝わってくることでしょう。

SACD Artwork © Hessischer Rundfunk
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by jurassic_oyaji | 2010-02-17 00:44 | 現代音楽 | Comments(0)