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BACH/Suites for Solo Vc, Partita for Solo Fl





藤井香織(Fl)
ビクターエンタテインメント/VICC-60441


フルーティスト藤井香織は、まだ芸大在学中の1999年に、彼女のビクターへのファースト・アルバムとして、バッハの「無伴奏チェロ組曲」のフルート版を録音していました。その時に演奏したのは1番から4番まで、それから6年の月日を経て、ここに残りの5番と6番を録音、晴れて全組曲をリリースしたことになります。さらにここにはもう1曲、オリジナルのフルート・ソロのための名曲、無伴奏パルティータが収録されています。ここではたと気づいたのですが、シュミーダーによるバッハ作品目録(BWV)では、無伴奏チェロ組曲のあとにこのパルティータが置かれており、この3曲はBWV1011,1012,1013と、見事な連番になっていたのですね。もちろん、この番号自体にはなんの意味もないのですが、これはちょっとした盲点でした。
前のアルバムを紹介したときには、担当者に「香織ちゃん」などと呼ばれてしまっていた彼女ですが、ご覧ください、このジャケットを。まさに黄金の楽器を携えたセレブ、といった趣ではないでしょうか。これからは地上デジタル(それは「テレビ」)。さらに、裏ジャケットには別のアングルの、胸の谷間もあらわなセクシー・ショットも披露されていますので、ぜひ、店頭で手にとってご覧になることをお勧めします。
しかし、もし、外見だけの興味でこのアルバムを買ってしまった人は、そのようなスケベ心を根底から恥じることになってしまうことでしょう。この演奏には紛れもなく、一人のフルーティストの真摯な姿が反映されているのですから。それは、1曲目の「5番」冒頭の、限りなく深い「C」の低音を聴くだけで、明らかになります。この曲をフルート用に編曲したパウル・マイゼンがライナーに寄せている「バッハが要求している暗い響き、ほとんど悲劇的と言ってもいい音色」という言葉が完璧に具現化されたものが、そこにはあったのです。続く十六分音符の、終始ビブラートを抑えた禁欲的な響き、それはまさに、フルートの華やかな音色とは一線を画した、ほとんど魂の叫びと言っても良いものです。ここからは、バッハがこの曲に込めた思いが、楽器(チェロ→フルート)や時代様式(バロック→現代)の違いなど軽く飛び越えて、明瞭に伝わってきます。
「6番」になって、その表情がガラリと変わるのも、素敵です。この一見軽やかな、しかしフルートで演奏するには多くの技術的な困難を伴う曲を、彼女はいともさりげなく、目の覚めるような技巧を持って吹ききっていたのです。
そして、フルートのためのパルティータ。もちろん、あまたのフルーティストがこぞって演奏しているものですから、比較対象には事欠きません。そこで彼女がこの曲に込めたアイデンティティは、とことんモダンフルートにこだわるアプローチでした。アルマンドの最後の「A」の高音の、なんと艶やかなことでしょう。サラバンドの息づかいの、なんとおおらかなことでしょう。
そんな、ほとんど欠点など見つけることは出来ないとさえ思われる演奏ですが、聴いていて心地よい音程が維持できていないと感じられる瞬間が幾度となくあったのは、彼女にもこれからの課題がまだ残っているということでしょうか。それがクリアできれば、ジュネーブ国際音楽コンクールで予選落ちをするようなことはないはずです。
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by jurassic_oyaji | 2005-04-04 19:31 | フルート | Comments(0)