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GARBIZU/Music for Txistu and Piano
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José Ignacio Ansorena(Txistu, Tamboril)
Álvaro Cendoya(Pf)
NAXOS/8.572096




またまた、誰も知らないトマス・ガルビスというスペインの作曲家のアルバムです。「初恋の味」ですね(それは「カルピス」)。そして、演奏されているのが、これも誰も知らない「チストゥ」という楽器です。まさにこのレーベルの面目躍如ですね。
「チストゥ」というのは、スペインのバスク地方の民族楽器です。リコーダーのように縦に構えて音を出す管楽器、リードのない、いわゆる「エアリード」なのも、リコーダーと共通しています。特徴的なのは、この楽器には音階を作るための指穴が3つしか開いていない、という点でしょう。その穴は、歌口から最も遠くの先端部分に、表に2つ、裏に1つ開いています。普通は、左手の親指で裏の穴、人差し指と中指で表の穴を押さえます。さらに、穴を全部開けたときに楽器を支えやすいように、先端部には輪っかがついていて、そこに小指か薬指を入れて固定します。そう、この楽器は、左手だけで演奏することが出来るのです。
そこで、余った右手では何をするのかというと、左腕に吊された「タンブリル」という、両サイドに皮が張ってある小さな太鼓を叩くのですよ。つまり、「チストゥ」と「タンブリル」はワンセットで演奏されることになっているのです。この演奏家は、「管楽器奏者」であると同時に「打楽器奏者」、しかもそれを同時に演奏しなければならないのですから、大変です。
なにしろ、穴が3つしかないのですから、そのままでは音は4つ(例えば「ド、レ、ミ、ファ」)しか出せません。あとは、強く息を吹き込むことで倍音を鳴らして、1オクターブ上の音(やはり「ド、レ、ミ、ファ」)、そしてもう1段階上の倍音でさらに5度上の音(「ソ、ラ、シ、ド」)を出して、かろうじて音階が出来上がります。もちろん、出来るのは全音音階だけ、半音を出すにはどうするのでしょう。
といった予備知識を持って、この「チストゥ」の「教授」であるアンソレーナという人の演奏を聴いてみましょう。その音は、まさにリコーダーそのものの素朴なものでした。しかし、その素朴な楽器が奏でる音階は、穴が8つ以上開いているリコーダーと殆ど変わらないほどの正確さを持っていたのです。半音もしっかり出していますよ。さすがは「教授」ですね。ただ、倍音を多用している高音部では、いかにも力が入っているというような、かなりハイテンションの音色になっています。
作曲家のガルビスは、1901年に生まれて1989年に亡くなった、やはりバスクの人です。そんな楽器のために作るのですから、そんなに難しいものではない、せいぜい民族音楽に毛の生えたようなものなのでは、といった先入観は、この卓越した技の冴えを見せる「教授」の演奏を聴くなり、跡形もなく消え去ります。これは、そんな「和み」を与えてくれるようなものではさらさらなく、言ってみれば、あの超絶技巧を思い切り振りまいた19世紀あたりの「ゴールデン・エージ」の産物そのものではありませんか。こんなシンプルな楽器でこれだけの細かい装飾的な音符を操るなんて、まさに神業です。
しかし、です。そんな華やかな技巧を凝らした曲を聴いて抱くのは、「こんなことをやっていて、いいのかなぁ~」という、なんともやりきれない思いです。確かにアンソレーナさんはよくやっています。しかし、何と言っても、この曲たちはこの楽器の機能の限界をはるかに超えたものを要求しているのは明らかなのですよ。最初のうちは「すごいなぁ」と思っていても、次第にその「無理」が見えてきてしまいます。そして、CD1枚聴き終わる頃には、そんな無理な演奏に付き合わされた疲れがどっと押し寄せてくるのですよ。それと、笛を吹きながら叩いている太鼓の、なんと鈍くさいことでしょう。
これも、前回と同じ、二度と聞きたくなくなるようなCDでした。それも、このレーベルの「面目躍如」たるところです。

CD Artwork © Naxos Rights International Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2010-02-28 23:08 | フルート | Comments(0)