おやぢの部屋2
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読んで楽しむ のだめカンタービレの音楽会
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茂木大輔著
講談社刊
ISBN:978-4-06-214887-0


いまや、「N響の首席オーボエ奏者」というよりは、「『のだめカンタービレ』の音楽監修者」としての知名度の方が高くなってしまった感のある茂木大輔さんが、みずから、その「のだめ」との関わりを語った本なのだめ
茂木さんの、今や殆どライフワークか、とまで思わされてしまうような「のだめ」への入れ込みようを見ると、そもそもこの作品が始まった時点で作者の二ノ宮さんとは何らかのつながりがあったのでは、と思ってしまいますが、それがそもそもの間違いであることが、この本の冒頭で、まず明らかにされます。茂木さんが最初に「のだめ」に出会ったのは、単行本の5巻が出ていた頃だ、というのですね。それだったら、ここのマスターと大して違わないじゃないですか。ただ、スタートは同じでも、マスターはあら探しに夢中になっていたのに対して、茂木さんの場合は、その設定の完成度の高さに感激、直ちにファンレターを送って作者とコンタクトをとった、というあたりが、大きな違いになってきます。
それからは、作者の周辺ともしっかり人脈がつながり、晴れて「公式スタッフ」としてスタート出来ることになったというわけです。ですから、マンガの連載が始まった時点では茂木さんはなんのアドバイスもしていなかったというのが真実、ちょっと意外ですね。つまり、二ノ宮さんには、すでにある程度マニアを納得させられるだけのスキルはあったということになります。
茂木さんの仕事は、ですから、そんな「のだめ」の世界を実際にコンサートで実現させるところから始まります。このあたりの「実況中継」は、今までの著作で彼が見せてきた、まさに息もつかせぬ緊迫感で、読むものを引きつけずにはおきません。ここでも発揮された、茂木さんの人脈、それらの人々の確かな能力を、真に感謝を込めて描写する茂木さんの筆致にも、ますますの磨きがかかっています。
ここで明らかにされるのが、当事者のみが知りうる正確な時系列です。最初にこの「のだめコンサート」が開催されたときには、実は世の中的にはそれほど「のだめ」は浸透してはいなかったのですね。もちろん、テレビドラマやアニメが制作されるという話すらもなかった時代です。そう、その後の、クラシック界までも巻き込んで、大ムーヴメントとなってしまった「のだめ現象」は、この茂木さんの企画がなければ、もしかしたらこれほど広がりのあるものにはならなかったかもしれないということが、ここではっきり分かることになるのです。ですから、ドラマ化や、ひいては劇場版の映画化などというとてつもないものにまで成長してしまった「のだめ」には、茂木さんの力がかなりの割合で荷担していたことも、同時に分かってきます。
したがって、ドラマ化にあたって、茂木さんがスタッフに加わったというのは、いとも自然な流れでしょう。しかし、そこで直面したのは、「クラシック」の常識をドラマに反映させることの難しさでした。例えば、日本ではまずあり得ない、コンサートが終わってからのスタンディング・オベーションのシーンなども、クラシック・ファンであれば間違いなく違和感を抱くものなのでしょう。当然、茂木さんはこの件について申し入れたそうなのですが、それは「ドラマ」として盛り上げる時には、多少現実離れしていても必要なことだ、という「論理」の前に、あえなく不採用となってしまいます。このあたり、茂木さんの悔しさのようなものがひしひしと伝わってきますね。
これだけの「当事者」の著作ですから、次の2点については当然述べられているだろうと思いながら読んでいました。それは、ドラマでズデネク・マーツァルがキャスティングされた経緯と、「千秋真一指揮」となっているCDでの、実際の指揮者の名前です。しかし、それらはついに語られることはありませんでした。

Book Artwork © Kodansha
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by jurassic_oyaji | 2010-03-02 23:13 | 書籍 | Comments(0)