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The Italian Contemporary Flute Works
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高橋眞知子(Fl)
菅原淳(Perc)
CAMERATA/CMCD-28196




日本のレーベルですから、「イタリア現代フルート作品集」という日本語のタイトルが最初にあったのでしょうが、それを英訳したときに「Contemporary」という単語を使ったのにはちょっと違和感が伴うのはなぜでしょう。ここで取り上げられている3人の作曲家のうち、2人まではその作品が前世紀の半ばに作られたもの、もちろんこれらは明らかに「現代音楽」という範疇で語られるべきものですが、それが果たして今生きている我々の「同時代」の音楽なのか、という点では、そろそろ認識を変えなければいけない時が来てしまっているのでは、という思いが、おそらくそのように感じさせるのでしょうね。
そんな「現代音楽」を積極的に取り上げているという高橋さんがここで選んだのは、まずシェルシのフルートのための作品でした。1953年から1955年にかけて作られた「Pwyll」、「Quays」、「Hyxos」という3曲(というか、別バージョンも含めて4曲)は、実は初めて聴いたもの。フルート・ソロのための「宝物」を教えてもらったような気がするほどの、美しい作品でした。
まず、普通のフルート1本で演奏される「Pwyll」は、そんな時代に作られたとは思えないようなリリカルは作品です。それこそ「同時代」の他の人たちのような頭でっかちの曲作りではなく、もっと感覚そのものを大切にしているような親しみやすさが感じられます。おそらく鳥の声の模倣でしょうか、そこからは、なにか具体的な風景のようなものが見えてきます。同じようなテイストを持つドビュッシーの「シランクス」、そして、ちょっと毛色は違いますが同じソロ・フルートのための定番、ヴァレーズの「Density 21.5」などとともに、フルート1本のための貴重なレパートリーがまた一つ見つかりました。
Quays」という曲は、同じ楽譜を普通のフルートと、同じ運指でそれより4度低い音の出るアルト・フルートによって演奏しています。たしかジョリヴェにも同じように「Pour Flûte(en SOL ou en UT)」(in Gin C のフルートで)という指示のある「呪文」という作品がありましたね。
Hyxos」は、アルト・フルートに打楽器が加わります。その打楽器というのが、「鐘」と「ドラ」。最初と最後の部分は、そんな、まるで仏教寺院のようなサウンドの中で、あたかも尺八のような渋い響きのアルト・フルートが、殆ど「お経」のようにメロディを紡いでいます。多少リズミカルな真ん中の部分は、もう少し南方系の、やはり宗教的な儀式を思わせるものです。
次の作曲家は、ついこの間ご紹介したマデルナです。「Dimensioni IIIからのカデンツァ」という曲が演奏されていますが、これはあの時の「Dimensioni III」という長い曲の最初のあたりに現れる、フルート・ソロのカデンツァだけを取りだしたものです。さらに、ここではフルートとテープのための作品も演奏されています。「テープ」というのは、当時、1950年代の「電子音楽」を録音したもの、それは、きちんと出版社から初演の時に使ったものが「修復」されて提供されているのだそうです。なにか、時代を感じさせられませんか?「今」だったら、シンセサイザーで、リアルタイムに演奏されるのでしょうか。
そして、最後にアルナルド・デ・フェリーチェという、まさに「同時代」の作曲家の「MU-夢」という、打楽器とフルートのための新作(2008年)が演奏されています。
高橋さんのフルートはここで初めて聴きました。経歴を見るとすでに還暦を過ぎたことが分かりますが、その音色とテクニックは、そんなお年は全く感じられない颯爽たるものでした。マデルナの「カデンツァ」も、前に聴いた若手の演奏にひけをとらないどころか、さらに「深み」が増したような印象すら受けるものでした。こういう人が、今まで表舞台に現れていなかったのは、本当にもったいないことなのではないでしょうか。

CD Artwork © Camerata Tokyo Inc.
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by jurassic_oyaji | 2010-03-04 20:03 | フルート | Comments(0)