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MOZART/Symphonies 29, 31, 32, 35 & 36
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Charles Mackerras/
Scottish Chamber Orchestra
LINN/CKD 350(hybrid SACD)




1986年から1990年にかけてTELARCにプラハ室内管弦楽団によって交響曲全集を録音していたマッケラスが、今度はLINNに、スコットランド室内管弦楽団と一緒にまた交響曲の録音を始めています。前に後期交響曲集がリリースされていましたが、これはそれに続く第2弾です。今回は29番から36番までとなっていますが、多少抜けているのは「全曲」にはこだわっていないからなのでしょうか。ただ、「32番」などという、殆ど聴いたことのないようなものまで入っているのは、彼なりのこだわりなのでしょうか。
こだわりといえば、3つの楽章しかないはずの「31番」で「4つ」の楽章を演奏しているのも、マッケラスならではのことでしょう。「パリ」という愛称でも分かる通り、この曲はパリのコンセール・スピリチュエルの支配人、ジョセフ・ルグロから依頼されて作ったものなのですが、初演の際に第2楽章のアンダンテがルグロには不評だったので、別のアンダンテを作って差し替え、再演の時にはそれを演奏したのです。つまり、この曲には「第2楽章」が2種類あるのですが、それを両方とも収録しているのです。さらに、第1楽章も自筆稿と最初にパリで出版された初版とでは、いくつかの箇所で異なっています(例えばティンパニとトランペットのリズムなど)が、マッケラスは通常は演奏されないこの「パリ初版」によって演奏しています。これらの第1楽章と第2楽章の異稿は、ベーレンライターの新全集でも「付録」という形で最後に掲載されていますから、実際に楽譜を見ながら確認することは簡単です(さっそくスコアを買いに行こう)。
この「付録」にある第2楽章は、さっきの「パリ初版」に採用されていたバージョンなのですが、3/4拍子、58小節のこの楽章は、まず演奏されることはありません。録音でも、オリジナル楽器による最初の交響曲全集であるホグウッド盤にかろうじてあるぐらいなのですが、マッケラスは以前のTELARC盤でもすでにこの2種類の「アンダンテ」を録音していました。ただ、実際は普通に演奏される6/8拍子、98小節の「アンダンテ」の方も、最初は「アンダンティーノ」の表記だったものを、細かいところを手直しして今の形になったものなのです。TELARC盤のライナーに彼の言葉が引用されていますが、いくらこだわりがあってもさすがにその「アンダンティーノ」を演奏することはせず、「オリジナルのうちの2番目の稿」を選んだと言っています。そう、この時点では、この普通に演奏されるアンダンテの方が「オリジナル」、つまり、初演の時に演奏されたものであると、マッケラスでも信じていたのですね。
ところが、1980年代の研究によって、最初に演奏された「オリジナル」は実は「パリ初版」にあるアンダンテの方で、現在一般的になっているアンダンテは、後に作られ、再演で差し替えられたものであることが明らかになったそうなのです。にわかに脚光を浴びることになったこのかわいらしいアンダンテ、果たしてこれから「オリジナル」として扱われるようになることはあるのでしょうか。
ちなみに、このLINN盤の表記では、6/8拍子の方の第2楽章は「アンダンティーノ」となっていました。もしかしたらマッケラスは改訂前の形(そのチェックポイントは、TELARC盤のライナーに書いてあります)で演奏しているのか、と期待したのですが、聴いてみたら普通の形、それはただのミスプリントだったのですね。
マッケラスの基本的なアプローチはTELARC盤とは変わりませんが、もはやチェンバロを加えることはなくなっています。さらに、演奏にはより深い重みが感じられるようになっています。何よりも、録音がまさに雲泥の差、これぞSACDという、ゾクゾクするほどの生々しさには圧倒されてしまいます。「29番」で弱音器を付けて演奏される第2楽章の弦楽器などを聴いていると、至福の世界に漂っているよう。

SACD Artwork © Linn Records
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by jurassic_oyaji | 2010-03-20 22:31 | オーケストラ | Comments(0)