おやぢの部屋2
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Broadway without Words
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Richard Hayman/
his Orchestra
NAXOS/8.578039-40




リチャード・ヘイマンとは、なんとも懐かしい名前です。彼の名前を付けたオーケストラは、主にポップスの世界でよく聴かれていたものでした。起伏に富むアレンジで(「平板」ではなかったと)、例えば「アンディ・ウィリアムズ」などのコンサートでバックを務めるといったように、当時の大物アーティストからは絶大なる信頼を得ていた指揮者であり、編曲者でした。
クラシックのフィールドでも、あのボストン・ポップスのアレンジャーとして、アーサー・フィードラーを支えていたそうです。ということは、おそらくルロイ・アンダーソンの後任者だったのでしょう。彼の編曲は、フィードラーのあとのジョン・ウィリアムスの時代でも使われていたといいますから、かなりのクオリティを持っていたのでしょうね。
今回の、有名なミュージカルを集めた2枚組のアルバム、いつもながらのこのレーベルのいい加減さのおかげで、いったいいつ頃録音されたものなのかは全く分かりません。いやしくも、コンピレーションの「マルP」を表示しているのですから、きちんとオリジナルのデータを明記するのはレーベルとして最低限のモラルだと思うのですが、どうでしょう。いや、そんなことも出来ないから、日本語のタスキでも「歌のないブロードウェイ」などというしょうもない「邦題」を付けてしまうのでしょうね。「歌詞」がないだけで、「歌」は、このアルバムには充ち満ちているというのに。まあ、ヘイマンは1920年生まれですから、おそらくもうこの世界からはリタイアしているのでしょうが、1980年代に作られた「オペラ座の怪人」や「レ・ミゼラブル」が収録されているのですから、それほど古い録音ではないはずです。
ここでは、全部で14の作品が登場します。それはもう名作揃い。というのも、ミュージカルの本体は知らなくても、その中のナンバーがカバーされて別な形で耳にする機会が多かった、ということでしょう。中でも、全部で5つもの作品が収録されているロジャース/ハマースタインのチームによるものなどは、もう「ミュージカル」という範疇を超えて「愛唱歌」と化しています。何のかんのといっても、やはり彼らは偉大なソングライターだったのでしょう。
ヘイマンの編曲は、単にオリジナルをオーケストラで華麗に響かせる、といった次元をはるかに超えた、まさに彼自身の「作品」となっています。おそらく、彼自身の中では、素材であるミュージカルを咀嚼し、必要なもののみを選び出してそれらを最も効果的に聴かせるように再構築するという作業が、常に行われていたのでしょうね。まず導入部では、オリジナルを超えるほどの、「腕によりをかけた」凝ったアレンジが披露されます。そして、数々のメロディアスなナンバーをつないでいき、最後にはリズミカルに盛り上がって終わる、という、まさに「黄金の法則」ですね。「サウンド・オブ・ミュージック」では、映画化の際にカットされた「How Can Love Survive?」というエルザ(だれそれ?・・・トラップ大佐の婚約者ですよ)のナンバーが入っているのも、そんな彼の価値観のあらわれなのでしょう。
そんなヘイマンの音楽、あくまで「楽しみ」として味わうには、申し分のない仕上がりになっています。しかし、例えば「ウェストサイド・ストーリー」のように、オリジナルの完成度があまりに高すぎるためにそれが体の芯まで染みついているような作品の場合は、そのような効果を優先させるための音楽の改竄に対しては強力な拒否反応が生まれることになってしまいます。それは、バーンスタインのチームが作り上げたものが編曲までも含めて不動の力をもっていたことを、はからずも気づかせてくれたことにもなるのでしょう。ほんと、「クール」や「アメリカ」といった鮮烈そのものの印象を持っていたはずのナンバーが、ちょっと甘めの編曲が施されただけで、これほどまでに陳腐で軟弱なものに変わってしまうとは。

CD Artwork © Naxos Rights International Ltd
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by jurassic_oyaji | 2010-03-22 20:17 | オーケストラ | Comments(0)