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MAHLER/ Symphonic Poem in Two Parts "Titan"
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Jan Willem de Vriend/
The Netherlands Symphony Orchestra
CHALLENGE/CC 72355(hybrid SACD)




マーラーが作った「2部から成る交響詩『巨人』」なんて、なんか聞き慣れないタイトルじゃないですか?これは現在では「交響曲第1番」と呼ばれている有名な作品が最初に演奏された時のタイトルなのです。いや、正確には1889年にブダペストで初演されたときには、「巨人」というサブタイトルは付いてはいなかったのですがね。そうなってくると、このタイトルで演奏されたのは1893年のハンブルクでのことになるのです。つまり、これは最初に作ったものをマイナー・チェンジ(改訂とも言う)したもの、ということになります。ちなみに、この頃までは楽章は「第1部」には3つ、「第2部」には2つと、全部で5つありました。後に何度かモデル・チェンジされるうちに、「花の章」と名付けられた2番目の楽章は削除され、現在あるような4楽章の形に、そしてタイトルも「交響詩」から「交響曲」と変わっていったのですね。さらに、その頃には「巨人」という呼び名も削除されてしまいます。つまり、未だに一部のCDで見られるような「交響曲第1番『巨人』」などというものは、マーラーは作ってはいなかったのです。さらに付け加えると、現在全集版として出版されている決定稿は、このハンブルク稿とは楽器編成や細かいオーケストレーションが異なっていますから、そこに「花の章」だけを加えて演奏するのも、作曲者の意図をねじ曲げたものになってしまうわけです。
久しぶりにリリースされた「花の章」付のこの曲を演奏しているオランダの中堅指揮者デ・フリエントは、まずタイトルからしっかり「ハンブルク稿」であることにこだわって、このマーラーの初期の構想をそのままの形で示そうとしています。以前若杉弘が東京都響と同じような形で演奏したものがCDになっていましたが、最近ではほとんど見られない試みですから、楽しみです。
デ・フリエントが音楽監督を務めているネーデルランド交響楽団は、オランダ東部の都市ズヴォレを根拠地に、ワールドワイドに活躍しているオーケストラ(なぜか、このオーケストラも、そして指揮者も、音楽之友社が発行している最新の名鑑ムックには掲載されていません)です。録音会場の響きがよいのか、ミキサーの腕が良いのか分かりませんが、もしかしたらマーラーにはふさわしくはないのかもしれない透明感あふれる音色は、とても心地良いものでした。管楽器はちょっとオフ気味ですが、弦楽器が全体を包み込む中から、しっかり「オケの一部」という感じで聞こえてきます。金管の咆吼にしても、決して生々しくはならない慎ましさが光ります。
そんなサウンドで決定稿である全集版との違いを耳で確かめるのは、ちょっと難しいかもしれません。まず第1楽章が始まってすぐのクラリネットの三連符が、ここではホルンによって演奏されているのですが、気づかないで素通りしてしまうかもしれませんね。しかし、第3楽章(つまり「第2楽章」のスケルツォ)では、頭からいきなり低弦と同じリズムでティンパニが入っているので、確実に「違ってる」のが分かります。これはかなりショッキング。でも、「フレール・ジャック」のメロディが短調になって現れる第4(第3)楽章のコントラバス・ソロも、このハンブルク稿はコントラバスとチェロの「ソリ」なのですが、言われてもまず分からないでしょう。
最後の楽章で盛大に響き渡るはずのホルン(よく、立ち上がって演奏しますね)が意外に聞こえてこないのは、楽譜のせいなのか、演奏のせいなのかは良く分かりません。しかし、この楽章の真ん中で、弦楽器が思い切り歌うべきところをいとも平静さを装っているのを聴くと、これもデ・フリエントの作戦なのでは、思えてきます。今のようにがむしゃらに盛り上がるのではなく、なにか醒めた(冷めた)ものがハンブルク稿にはあることを、彼は感じとったのかもしれません。効き過ぎたエアコンみたいに(それは「震えんと」)。

SACD Artwork © Challenge Records Int.
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by jurassic_oyaji | 2010-04-05 19:59 | オーケストラ | Comments(0)