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Beatles Arias



Cathy Berberian(MS)
Guy Boyer/
Ensemble de musique de chambre
TELESCOPIC/PIC 11



1983年に亡くなったキャシー・バーベリアンについては、ひところのような知名度はもはや失われてしまっているのかもしれません。やはり肉も食べなくっちゃ(それは「ベジタリアン」)・・・。1928年生まれ(これが公式の生年だと信じられていたのですが、今回のライナーには「1925年」とあります)のこの不世出の歌手は、1950年にルチアーノ・ベリオと結婚(66年には離婚します)、彼の代表作「セクエンツァ」を献呈されるなど、「戦後」の現代音楽シーンに確かな足跡を残しただけではなく、そのころ蘇演が行われたモンテヴェルディのオペラに出演するといったように、時代やジャンルの枠を軽く飛び越えたところで、華やかに羽ばたいていたのです。
そんな彼女は、もちろんポップ・ミュージックにも関心を示していました。このアルバムは、全編ビートルズのカバーという、当時のクラシック歌手としてはほとんどあり得ないコンセプトになっています。彼女がいかにこのロックグループの作品を評価し、自身のレパートリーに加えようとしていたかは、これが録音された時期を考えれば、明らかになることでしょう。パリのスタジオでもたれたこのアルバムのためのセッションは、1966年の12月、そこで収録された12曲のうちの3曲は、そのほんの4ヶ月前、同じ年の8月にリリースされたばかりの、ビートルズの7枚目のオリジナルアルバム「REVOLVER」で初めて公になった曲だったのですから。いかにヒットしていたとはいえ、そんな短期間の露出の中で、これらの曲の価値を認めた彼女の慧眼こそを、ここでは評価すべきでしょう。
このアルバムは、フランスのPHILIPSのサブレーベルであるFONTANAから「Beatles Arias」というタイトルでリリースされたあと、ドイツとイギリスでジャケットのデザインは変わりますが、同じタイトルでリリースされました。しかし、アメリカで発売されたものは、このようにクラウス・ヴォアマンによる「REVOLVER」のデザインを見事にパロディにしたものになっています。しかも、タイトルが「REVOLUTION」とくれば、その2年後にビートルズが同じタイトルのシングルナンバーを発表していることとの関連性にまで思いを巡らすことすらも、可能になってくるのです。

ビートルズ・ナンバーをバロック・オペラのスタイルで歌う、というアイディア、しかし、40年の時を経た今となってみれば、その成果には疑問を差し挟む余地がないとは言えません。最大の誤算は、発表当時は紛れもないロックンロールであったビートルズの作品の一部が、現在ではほとんど「クラシック」と変わりない評価を得てしまっているという状況。そこでは、「ミッシェル」、「エリノア・リグビー」、そして「イエスタデイ」をクラシック風に演奏してみても、なんのインパクトも与えることは出来ません。ですから、オリジナルがきちんとロックのテイストを保っている「涙の乗車券」や「抱きしめたい」あたりの落差の大きさにこそ、真の価値を見出すべきなのでしょう。
本編は全てギイ・ボワイエの編曲によるものですが、ボーナス・トラックとして、「涙の乗車券」のルイス・アンドリーセンによるピアノ伴奏版のライブ・テイクなどが加わっています。1970年のWERGO盤(下の画像)でも聴くことの出来るこのバージョンは、ブリッジの部分がレシタティーヴォ・セッコ風になった、より完璧なアレンジ、これがなければ、この復刻版はただの懐古趣味で終わっていたことでしょう。

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by jurassic_oyaji | 2005-04-07 19:52 | 歌曲 | Comments(0)