おやぢの部屋2
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BACH/ Markus-Passion
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Dominique Horwitz(Nar)
amarcord
Michael Alexander Willens/
Kölner Akademie
CARUS/83.244




バッハは受難日の礼拝に演奏するために「マタイ」、「ヨハネ」の2つの受難曲以外にも、福音書を主なテキストにした受難曲を作っています。しかし、それらは現在は演奏できる形では残ってはいません。今でこそ、バッハの自筆稿などというものはほとんど宝物のような扱いを受けていますが、彼が生きている頃はただの紙くずだと思われて、暖炉の焚き付けにでもされてしまっていたのでしょう。なんとももったいない話ですね。
とりあえず「マルコ受難曲」は、歌詞だけは残っているのだそうです。レシタティーヴォはもちろん新約聖書の「マルコ福音書」から取られたものですし、アリアの歌詞は、「マタイ」の歌詞を作ったピカンダーの手になるものです。さらに、曲も以前作ったお葬式のためのカンタータBWV198を使い回しているという情報もあるために、一部のアリアは修復が可能でした。その修復作業の最初の成果が、1964年に出版されたディートハルト・ヘルマンによる再構築稿でした。この楽譜を使って演奏された録音が、ペーター・シュライアーが指揮をしたDECCAですね。この稿のポイントは、エヴァンゲリストの語りや、登場人物のセリフには、音楽が付けられていない、ということです。アリアなどは使い回しされた別の作品から作り直すことが出来ますが、このようなレシタティーヴォ・セッコは、テキストにあわせてバッハが作ったメロディがないことにはどうしようもありません。中には、それらしくでっち上げた稿もありますが、ヘルマンはそこまではやらなかったのでしょうね。ないものはしょうがないので、とりあえず言葉だけは、と、こういう「ナレーション」の形を選択したのでしょう。
今回のCDでは、その「ディートハルト・ヘルマン稿」を元に、さらにいくつかのコラールを加えてアンドレアス・グレックナーという人が校訂を行ったもので、2001年にこのレーベルの母体であるカルス出版から刊行されています。というか、言ってみればその楽譜を実際に音にしたサンプル、ということになるのでしょうね。
ライナーノーツも執筆しているグレックナーによると、2009年の初頭に、サンクト・ペテルブルクのロシア国立図書館で、この曲がライプツィヒの聖トマス教会で1744年に再演されたときに印刷されたテキストが発見されたのだそうです。それには、1731年の初演の時にはなかった2つのアリアが含まれているのだとか、この曲を巡っては、これからもさまざまなアプローチがなされることでしょう(それにしても、ライナーではきちんと「ディートハルト・ヘルマン」と書いてあるのに、ジャケットでは「ディートマル・ヘルマン」とありますよ。楽譜出版社がこんなところで間違えるなんて)。
ここで歌っているのは、「アマコルド」という、その聖トマス教会聖歌隊のOB1992年に結成した5人組の男声アンサンブルに、ゲストとして4人の女声が加わったメンバーです。「OVPP」とまではいきませんが、各パート2人(ベースは3人、一人余っとるど)という編成で、もちろんアリアもメンバーが歌っています。そこで気になるのは、アリアと合唱との相性なのですが、2曲あるアルトのアリアを歌っているクレア・ウィルキンソンなどは、アリアでさえもロングトーンでは全くビブラートをかけないで歌っていますから、もうこれは完全に合唱になっても溶け込んだ声であることが分かります。ソプラノの2人はソロではかなり対照的な音色なのに、合唱になると見事にイノセントな声で全体をリードしていますし。
ただ、やはりレシタティーヴォをナレーションで処理するというのには、「OVPP」以上に抵抗を感じてしまいます。これはあくまで「仮の姿」、たとえでっち上げでも、バッハっぽいメロディがあったほうが、ただ「語る」よりははるかに作品としての意味があるのではないでしょうか。

CD Artwork © Carus-Verlag
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by jurassic_oyaji | 2010-04-15 19:57 | 合唱 | Comments(0)