おやぢの部屋2
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MAHLER/Symphonie No.1, Rückert-Lieder
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Christine Schäfer(Sop)
Christoph Eschenbach/
Deutsches Symphonie-Orchester Berlin
CAPRICCIO/C 5026




このレーベル、一時は完全に消滅していたかのような様相を見せていました。なにしろ、大量に昔のアイテムが「放出」されて、まさに「閉店セール、現品大処分」といった趣でしたからね。あまりの安さに、ついケーゲルのSACDなどという「クズ」まで買わされてしまいましたっけ。その後、どんな経緯があったのかは知る由もありませんが、結局カタログの大部分を引き継いだPHOENIXレーベルの傘下に入って、新録音なども行うようになったのだそうなのですね。品番が「C」で始まり、そのあとに4ケタの数字が続くものが、そんな新しい録音なのだそうです。
そんな新録音、しかもセッション録音で、エッシェンバッハとベルリン・ドイツ交響楽団という新鮮なコンビの演奏によるマーラーが出ました。今年からはワシントンのナショナル交響楽団のシェフに就任したエッシェンバッハですが、決して良好な職場環境ではなかったはずの前任地フィラデルフィアでも、ONDINEの録音ではなかなか聴きごたえのあるものをリリースしてくれていましたから、かなり期待は持てるはずです。オーケストラも、かつてはフリッチャイの元で「RIAS放送交響楽団」という名前で多くの録音を残していた名門ですし(ほう、そうなんですか)。
そんな予想にたがわず、この「1番」は、とても主張のはっきりした素晴らしいものに仕上がっていました。なによりも、最初から最後まで、このオーケストラの力を信じてそこから最良のものを引き出そうという指揮者の思いが、見事に表れていたのです。特に、第2楽章で見られた余裕の表現からは、真の音楽の持つ楽しさが伝わってきます。この楽章での「3拍子」は、たとえばウィンナ・ワルツでその地方の「訛り」がえもいわれぬ味となるように、ほんのちょっとしたリズムの処理が、大きくその魅力を左右することになります。「タララー」という基本的なリズムは決して均等に演奏されるのではなく、「タラッラー」みたいに、1拍目の「裏」をほんの少し早めに(もちろん、それは楽譜に表すことは出来ません)入ることによって、いかにも「レントラー」っぽく粋に感じられるのですね。このチームが繰り出すそのリズムが、まさに絶妙なのですよ。それは、指揮者の指示をオケが忠実に実行している、といった次元のものではなく、両者がまさに阿吽の呼吸でいとも自然に醸し出しているのですね。それだけではなく、次のフレーズへ入るときのほんのちょっとした「タメ」も、絶妙の味付けとなっています(最近北欧の指揮者と北欧のオケによるこの曲のコンサートを聴いたのですが、そこでは完全に「楽譜通り」のリズムで演奏されていて、がっかりしたものです。そこからは、マーラーの匂いが漂ってくることは、けっしてありませんでした)。
第4楽章では、いたずらに煽るようなことはなく、少し抑え気味のテンポで進んでいきます。それは、決してのめり込むようなものではないにもかかわらず、そこから生まれる高揚感は、聴くものを充分に「嵐」の中に誘い込んでくれるものでした。それだからこそ、その嵐が収まったときに表れる穏やかな光景での思い入れたっぷりの表情が心を打ちます。この風景は、まさに楽園、なんと美しいことでしょう。それは、いずれはまた「嵐」によって打ち消されるのですが、そんな、決してたどり着くことのない楽園だからこその美しさが、切ないほどに伝わってはこないでしょうか。
カップリングとして入っている「リュッケルトの詩による歌曲」も、素晴らしい仕上がりです。歌っているのはクリスティーネ・シェーファー、いつもながらの考え抜かれた表現は、あたかも感性ではなく知性に訴えて来るような刺激的なものでした。彼女の歌はまさに変幻自在、リアリティあふれる発音によって、歌詞の持つ世界が見事に描かれます。

CD Artwork © Phoenix Music Media
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by jurassic_oyaji | 2010-04-26 20:08 | オーケストラ | Comments(0)