おやぢの部屋2
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All You Need-Livre de Clavecin
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Anders Danman(Cem)
KING INTERNATIONAL/KKC 027




ビートルズの全オリジナル・アルバムが、新しいマスタリングで再発されたのは、去年のことでしたっけ。あの時の大騒ぎを思い出すにつけ、このグループの商業的な成功には、今更ながら驚かされてしまいます。
そんなオリジナルと並行して、彼らの作品のカバー曲も、夥しいものが作られているのはご存じのとおりです。さらに、マジメなカバーではなく、「パロディ」っぽいものもどんどん作られたというのも、いかに彼らの曲が「元ネタ」としての存在感を持っていたかという証になるわけです。ヘビメタによるパロディ、などというおぞましいものもありましたね。もちろん、その親しみやすいメロディやハーモニーをクラシック風に扱ったという、クラシックサイドからの「パロディ」は、なんたって大歓迎、そこにおそらく最初に目をつけたのが、あのジョシュア・リフキンだったのかもしれませんね。
さらに、1977年ごろにリリースされたのが、ベルギーのピアニスト、フランソワ・グロリューによるぶっ飛んだカバーでした。ビートルズの曲を、それぞれクラシックの有名作曲家のスタイルで演奏する、というものですね。というより、その作曲家の特定のピアノ曲に、ビートルズのメロディを埋め込む、というのが基本的なやり方、たとえば「サティ風」では、「ジムノペディ」のリフで「ハロー・グッドバイ」を演奏する、といった感じですね。これは、かなり高度なやり口、クラシックの曲のほうを知っていれば知っているほど楽しめるという、痛快なものでした。「ブラームス風」や「シューマン風」の渋かったこと。あまりの評判に(確か、それは日本でだけの評判だったはずですが)、数年後には「続編」も出ましたね。その中の「バルトーク風」などは、(「ミクロコスモス」+「エリノア・リグビー」)÷2ですよ。すごすぎます。
それから30年以上たって、スウェーデンのチェンバリスト、アンデシュ・ダンマンが作ったのが、このグロリューの精神をそのまま受け継いで、しかし、「元ネタ」はフランス・バロックの雄、フランソワ・クープランやその周辺の作曲家の作ったチェンバロ(いや、クラブサン)曲、特に、その時代の舞曲を集めた「組曲」に特定したという、さらにマニアックな「パロディ」でした。
収録されているのは、「ト長調」と「ニ長調」の2曲の「組曲」です。それぞれ「前奏曲」に始まって、「アルマンド」、「サラバンド」、「ジーグ」、「クーラント」といった、おなじみの名前の典雅な舞曲が続きます。船長ではありません(それは「ダーラント」)。仮に、何の予備知識もなしにこれらの「組曲」を聴いたとしたら、それはまさしく知られざるフランス・バロックのクラブサンの曲だと信じ込んでしまうかもしれないほど、これらの曲の「なりきり」は見事なものでした。いかにも「フランス風」の装飾がいいですね。というか、ジャケットの曲名を見ないことにはそこで使われているビートルズの曲が何なのかを認識することすら困難になってしまうほど、レノン/マッカートニー/ハリソンのナンバーたちは、そのメロディが完膚なきまでに解体されてしまっています。ですから、そんな断片が見事にクープランの衣をまとっていることを発見した時の喜びは、確実に「感動」、言い換えれば「爆笑」につながっていくことは間違いありません。
もはや不可能なことですが、何の情報もなくこの曲を聴かせて、その「中身」を当てさせる、というクイズを作ったら、さぞかし難問になることでしょう。
しかし、このジャケットに「4人」写っているダンマンさんは、そんな面白いことをやったにしては、なんだかずいぶん厳しげな顔立ちですね。もしかしたら、彼としては大まじめにこの曲を作ったのかもしれませんよ。きちんと「考証」を入れて。それが逆に真の「笑い」を生んだのだ、と思うのも、楽しいものです。

CD Artwork © King International Inc.
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by jurassic_oyaji | 2010-05-02 23:13 | ポップス | Comments(0)