おやぢの部屋2
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BERLIOZ/Symphonie Fantastique
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Esa-Pekka Salonen/
Philharmonia Orchestra
SIGNUM/SIGCD193




もはやフィルハーモニア管弦楽団の自主レーベルと認知されているSIGNUMレーベルの新譜は、2008年秋からこのオーケストラの首席指揮者に就任しているサロネンの指揮で、「幻想」です。就任直後、2008年の9月にロイヤル・フェスティバル・ホールで行われたコンサートのライブ録音です。いつもの彼らの録音のように、演奏後の拍手までしっかり入っていますから、それほど編集の手は入っていない、文字通り「ライブ」に近いものなのでしょう。
同じサロネンの「グレの歌」のようなSACDでなく、ノーマルCDだったのは残念ですが、このコンサートはフルートのケネス・スミスが「乗り」だったのは、嬉しいことです。やはり、彼が吹いているとこのオーケストラの音全体が、とても上品に聞こえてきます。今回の録音はちょっとオフ気味のマイクアレンジのようで、個々の楽器の解像度はあまり良くなく、全体の響きがもっさり聞こえる感じですから、特にスミスの音が目立って聞こえるということはありませんが、それだからこそ全体の音色を決めるフルートとしての重要性が際立っているのでしょう。この曲の場合、特にヴァイオリンとのユニゾンがいたるところで現れますから、そんな時の「輝き」はまさに絶品です。
サロネンはまず、そんな美しい響きを、きっちり作り上げようとしているように感じられます。第1楽章で、弱音器を付けたヴァイオリンが歌い出す箇所での繊細なアンサンブルには、思わず息をのむほどです。そして、そんなかっちりとしたアンサンブルを維持した上で、必要なところでは思いっきり弾けてくれています。そのあたりのさじ加減は絶妙、決して煽られているわけではないのに、しっかり熱いものが伝わってくる、というクレバーさが魅力です。繰り返しを行わないのも、すっきりしていて良い感じ。
第2楽章には、オプションのコルネットが入っています。それだけ華やかさが増す筈なのに、楽章全体はなにか冷静な表情に支配されています。コルネットは華やかさのためではなく、逆にシニカルな味付けとして用いられたのでは、などと考えるのは、うがった見方でしょうか。もちろん、体形を整えるためではありません(それは、「コルセット」)。
第3楽章では、呼びかけを行うコール・アングレの積極的な表現が、かなり強烈な印象を与えてくれます。そして、それに答えるバンダのオーボエが、なんだか1回ごとに遠ざかっていくように聞こえるのは、気のせいでしょうか。もう、最初のこの段階で、語りかける相手はすでにひいている、そんな演出なのかもしれませんね。そのせいか、最後に同じコール・アングレの呼びかけに答えるティンパニの雷鳴も、いかにも絶望的な思いにさせられるものでした。
第4楽章の「断頭台への行進」では、一見ノーテンキなマーチのように聞こえて、その実恐ろしさが潜んでいる、というコンセプトを、最後近くでのとんでもないテンポの切り替えで表しているように思えてしまいます。
そして、終楽章では、鐘の音といい、「Dies irae」のテーマといい、なんとも不気味な音色に仕上がっているのが素敵です。他の部分がきれいな音色にまとまっているだけ、こういうところでのくずし方が強烈なインパクトとなって伝わってくるのでしょう。
余白には、同じコンサートからベートーヴェンの「レオノーレ序曲第2番」が入っています。「3番」に比べたら明らかに完成度の低い、正直、演奏する価値などないような曲ですが、それを、このかっちりとしたアンサンブルで聴かされると、その「駄作」ぶりがより強調されてくるようです。スコアがないので断定はできませんが、おそらく木管が間違えて1小節早く入っているところがあります。これは、ライブならでは。

CD Artwork © Signum Records Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2010-05-10 19:16 | オーケストラ | Comments(0)