おやぢの部屋2
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XENAKIS/Atrées etc.
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Konstantin Simonovich/
Instrumental Ensemble of Contemporary Music, Paris
EMI/687674 2




今回、EMIの「20th Century Classics」というバジェット・コンピレーションのシリーズの一環としてリリースされたものの中に、こんなクセナキス編が入っていたのには、ちょっと驚いてしまいました。ペンデレツキあたりではかなりまとまったカタログを誇っていたのは知っていましたが、このレーベルがクセナキスを録音していたなんて、実は知らなかったものでして。
ご存じのように、EMIというレコード会社は、かつては独立していた様々な会社が次第に統合されて出来上がったものです。ですから、それぞれの会社(というか、レーベル)が個々に独立した企画で録音を行うということもしばしばありました。この、クセナキスの初期のアンサンブル作品を収めたアルバムも、フランスのEMIであったPathé Marconi1968年と1969年に制作したものだったのですね。ちなみに、Pathé Marconiはイギリスの「HMV(His Master's Voice)」と同じく、「ニッパー」のマークを使っていましたが、キャプションはフランス語で「La voix de son maitre」、つまり「VSM」だった、などということを知っている人はずいぶん少なくなりました。
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ここに収録されている作品を作曲順に並べてみると、最も初期のものが1957年の「アコルリプシス」、そして1961年の「ヘルマ」に続いて、1962年の「ST/10-1080262」、「ST/4」、「モルシマ-アモルシマ」、「アトレ」、「ポラ・タ・ディナ」から、1965年の「ノモス・アルファ」、「アクラタ」まで、初期のクセナキスを語る上で欠かすことのできない名作のオンパレードではないですか。なんか、タイプしていても興奮してしまいますよ。というか、録音データからすると、これらのものはほとんどすべてが初めて録音されていたものなのではないでしょうか。確か、昔国内盤でも日本コロムビアの現代音楽シリーズの廉価盤LP(真っ黒なジャケットに、曲名だけが白く印刷されていたかっこいいデザイン)で一部が出ていたような。指揮者のシモノヴィッチ(下野竜也さんの芸名ではありません)という名前も、同じシリーズの高橋悠治がピアノを弾いていた「エオンタ」で記憶にあったものです。
その「エオンタ」は、LE CHANT DU MONDEからCD化されましたが、こちらのEMIの録音は、そんな断片的なものしか耳にしたことがなく、しかも、それには「EMI」というクレジットはありませんでしたから、その全貌(多分)がこんな風にCD化されたのはとても意義深いことなのではないでしょうか。
まず、「ヘルマ」に、1976年の高橋悠治(DENON)以前の録音があったということが、一つの驚きです。ここで演奏しているジョルジュ・プリュデルマシェールGeorges Pludermacherという人は全くなじみがありませんが、この超絶技巧が要求される曲をここまでの完成度で演奏しているのは素晴らしいことです(いや、実は、この曲を楽譜通りに正確に演奏した録音などは存在しない、という説もあるのですが)。
そして、「声」が入っている作品、「ポラ・タ・ディナ」も、今回初めて聴くことが出来ました。「メロディ」とは無縁の音楽を構築したクセナキスですが、ここから聞こえてくる無垢な「歌」は、なんとも印象深い光を放っています。
この時期のクセナキスは、確率論や統計論を音楽を作る上で応用、その演算のためにコンピューターを使うという、きわめて斬新な方法をとっていました。その結果できあがった作品は、当然のことながら、それまでの音楽の流れからは完璧に遊離したものでした。弦楽器のグリッサンドが幾重にも絡み合う中から生まれてくる「混沌」が産み出す衝撃は、今でも色あせることはありません。今までの西洋音楽が、自然の中の秩序から音楽を作り上げたように、いわば「秩序」と同程度に存在しているはずの「無秩序」から作り出されたクセナキスの音楽、その、最も早い時期の彼の軌跡を、ここで存分に味わってみようではありませんか。信じられないほど良好な録音で。

CD Artwork © EMI Records Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2010-05-16 23:35 | 現代音楽 | Comments(2)
Commented by toto at 2010-05-18 09:20 x
Pludermacherはベートーヴェンソナタ全集、シューベルトソナタ全集を録音してるかなり有名なピアニストです。
Commented by jurassic_oyaji at 2010-05-18 22:42
totoさま。コメントありがとうございます。
確かに、調べてみると録音はありました。でも、そんな人が「ヘルマ」というのが、意外です。