おやぢの部屋2
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ANDERSEN/Etudes and Salon Music
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Kyle Dzapo(Fl)
A. Matthew Mazzoni(Pf)
NAXOS/8.572277




デンマーク出身の「アンデルセン」さんと言えば、ふつうはあの童話作家、ハンス・クリスティアン・アンデルセンを思い出しますよね。もはや「アンデルセン」という言葉は、「人魚姫」の作家としての「記号」と化しています。ですから、フルートのために多くのエチュードを作ったぐらいのことでは、このヨアヒム・アンデルセンさんが多くの人に知られることはまずありません。せめて、あんこの入ったおせんべいでも作らないことには(それは「餡出る煎」)。
事実、フルートを勉強していて、型どおりアルテス、ケーラーと進んだ後に「アンデルセンをやってみましょう」と先生から告げられて奇異な感を抱いた人は少なくないはずです。先生としては、ついに弟子が基礎的な技術をマスターし、いよいよ次のより高い段階の課題に挑めるだけの力を付けたことを伝えるためにその名前を用いたのであって、不審に思われるよりも喜びに打ち震えることを期待していたというのに。そう、フルートのレッスンの現場というごく限られた世界の中では、「アンデルセン」という言葉は「上級者のためのエチュード」という「記号」だったのです。
そんなアンデルセンさんは、まずは卓越したフルーティストとして資料には登場します。彼は、あのベルリン・フィルが創設されたときのメンバーだったのですね。それだけではありません。18821017日というのが、その、現在では世界最高のオーケストラとなった団体が初めて公衆の前で演奏を行った日なのですが、その記念すべき設立記念演奏会で、アンデルセンさんはそのオーケストラをバックにフルート・ソロを披露しているのですよ。
その時に演奏された曲が、まずこのCDで紹介されている、というあたりが、なかなか粋な計らいです。演奏しているカイル・ツァポという人は、彼の伝記や作品目録なども出版しているという「アンデルセンおたく」ですから、それも当然のことでしょう。それは、サンクト・ペテルブルク音楽院の教授だったイタリア人作曲家チアルディが作った「ロシアの謝肉祭」という有名な(もちろん、フルート関係者の間では、ですが)変奏曲です。オリジナルはご当地の作曲家アレクサンドル・セロフが作ったオペラの中のテーマに、7つの技巧的な変奏を付けたものですが、おそらくアンデルセンさんはこの演奏会のために、そのテーマの前に長大な「カデンツァ」を挿入しました。現在ジムロックから出版されているピアノ伴奏の楽譜にも、このカデンツァは取り入れられており、特に「アンデルセンの」という注釈なしに演奏や録音がされているようです。ただ、今まで聴いたことのあるCDでは、このカデンツァは3分程度のものだったのが、今回は4分半という長いものですので、これが「完全版」なのかもしれませんね。
この時代、もうすでにベーム式の楽器は出回っていましたが、もちろんそれがすべてのフルート関係者の楽器になっていたわけではありません。アンデルセンさんも、そんな保守的な方、ですから、このカデンツァにしても、エチュードにしても、確かに華やかなフレーズ満載ではあっても、そんなに難しいという感じはしません。さらに、「ドン・ジョヴァンニによるファンタジー」というタイトルの「ポプリ」がここでは紹介されていますが、それはなんとも素朴な「名曲集」でした。しかも、この中には「フィガロ」の中の曲である「Non più andrai」までもが入っていますよ。確かに「ドン・ジョヴァンニ」の中でこのメロディが流れる場面はありますが、これはちょっと・・・。
もし、ここでのツァポ女史の演奏の精度がもう少しマシなものであったなら、そんな突っ込みはなかったのかもしれませんね。彼女のテクニックはそこそこなのに、細かいパッセージがあまりにもていねいなため、こういう曲ではぜひ味わいたいはずのスリル感が全くありませんし、何よりも音程が最悪なため、曲に浸ることすらできません。

CD Artwork © Naxos Rights International Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2010-05-26 21:20 | フルート | Comments(0)