おやぢの部屋2
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WAGNER/Lohengrin
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Jonas Kaufmann(Lohengrin)
Anja Harteros(Elsa)
Wolfgang Koch(Telramund)
Michaela Schuster(Ortrud)
Richard Jones(Dir)
Kent Nagano/
Bayerisches Staatsorchester
DECCA/074 3384(DVD)




昨年7月にミュンヘンで上演されたオペラが、もうDVDとなって店頭に並んでいました。これは、やはりタイトル・ロールを歌っているカウフマンの人気を裏付けるものなのでしょうか。というか、これはすでにこのアーティストをメインとした2枚のCDと1枚のDVDをリリースしているDECCAの戦略なのでしょうね。このレーベルからの最初のCDこそ、いかにもアイドル的な売り方で、ちょっと無理があるようなレパートリーでしたが、それ以降は彼の持ち味が存分に発揮できるものとなり、きっちり実力を知らしめるようなものになって行ったのは、幸運なことでした。そして、今回は間違いなく彼の本来の資質であるワーグナー・テノールとしてのステージです。待望久しい本格的なヘルデン・テノール、しかも、あのペーター・ホフマンのように、まさに「英雄」にふさわしい外観を備えているカウフマン、期待はいやがうえにも高まります。
確かに、カウフマンは完璧なローエングリンを見せてくれました。彼の声は理想的な「ヘルデン」であるとともに、力ずくで押しまくることは決してないクレバーさをも併せ持つしなやかなものです。そんな柔軟性を駆使して繰り広げられるワーグナーは、決して一本調子に陥ることのない表情豊かなものとなります。最後の大ソロ「In Fernem Land」では、ほとんどファルセットに近いソット・ヴォーチェでそっと始まり、徐々に盛り上げて最後に輝かしいクライマックスにたどり着くという、計算しつくされた表現、これは、確かにCDでも聴くことが出来たものでしたが、それをステージで味わうとまさに鳥肌が立つほどのインパクトが感じられます。もちろん、ここは慣例通り「1番」しか歌っていませんが、こちらでの口直しに、「2番」もぜひ聴いてみたかった気がします。
そのCDでの繊細なオーケストラの印象がまだ残っていたのでしょう、ここでのバイエルン州立歌劇場のピットからは、なんとも雑な響きしか聞こえてはきませんでした。こんなところが、出来合いの公演をそのまま収録して商品にしているというDVD(もしくはBD)の弱点なのでしょう。その場にいて味わうには過不足のないものでも、このようなメディアで繰り返し聴かれるときの、このルーティン・ワーク根性丸出しの演奏は致命的です。
ここでの、リチャード・ジョーンズによる、例によって現代に「読み替え」られた演出も、同様に悲惨なものでした。荒唐無稽な英雄譚からもっと現実的な意味を見出そうという意図は分かりますが、そんな演出家の思いはあいにく出演者、特に合唱の群衆には全く伝わることはなかったのでしょう。とてもプロとは思えない(現代のオペラハウス付きの合唱団には、「歌って踊れる」資質が欠かせません)学芸会のレベルの演技は、醜悪そのものでした。それにしても、白鳥に導かれて登場するはずのローエングリンが、ロボット(首が動いていましたね)の白鳥を抱きかかえて歩いてくるとは。
映像監督は、「ニューイヤー」を担当していたカリーナ・フィービッヒでした。こんな感じで、おそらく今までブライアン・ラージが占めていたポジションを継承することになるのでしょうか。確かに、息の長いズームインなど、ラージの様式を忠実に取り入れているところもあるようですね。それと同時に、独自の「冒険」も試みています。ここでは、ステージ袖の手持ちカメラでしょうか。確かに、この演出ではそんな奇抜さも効果を発揮しています。
それは、カーテン・コールを待つ歌手たちの素顔などという、面白いものも提供してくれます。カウフマンのリラックスぶりといったら。しかし、その映像からは、こんなとんでもないカットも。
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うすうす知ってはいましたが(デ・ニースがDVDで暴露していましたね)カウフマンほどの人でもマイクが必要な時代なのですね。まあ、これは録音用の補助だったのだ、と思いたいものです。

DVD Artwork © Decca Music Group Limted
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by jurassic_oyaji | 2010-06-07 19:55 | オペラ | Comments(0)