おやぢの部屋2
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Aces High
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VOCES8
SIGNUM/SIGCD 187




またまた、素晴らしいコーラス・グループの登場です。「ヴォーチェス8」という、その名の通りの8人の「声」によるイギリスのアンサンブルです。2003年に、ウェストミンスター寺院の聖歌隊(つまり、ダイアナ妃の葬儀の時に歌っていた聖歌隊で、「ウェストミンスター大聖堂」の聖歌隊とは別団体)のOBによって作られたそうです。腰回りが異常に太い怪物のような人たちなのでしょうか(それは「ウェストモンスター」)。ただ、アルト・パートまでは男性が歌っていますが、ソプラノは女性が2人加わっていますから、純粋なOBは6人だけということになります。ソプラノ、アルト(カウンターテナー)、テナー、ベースがそれぞれ2人ずつというのは、あの「スウィングル・シンガーズ」と同じ編成ですね。あるいは、「マンハッタン・トランスファー」×2、とか。
このグループは、それこそルネッサンスのポリフォニーから現代のジャズやポップスまで、とても幅広いレパートリーを誇っているのだそうです。今回のアルバムは、その「ポップス」のテリトリーでのお披露目です。ア・カペラです。
ちなみに(阿部寛風)、「ア・カペラ」という言葉は、日本ではかなり混乱した使われ方をしていたようです。本来は「無伴奏の合唱」のことなのですが、ちょっと気取った芸能人達が、一人だけで歌うときも伴奏がないと「ア・カペラ」などと言ったものですから、単に「無伴奏」という意味に取り違える人が出てきてしまいました。これは明らかなまちがい、いつか言ってやらなければ(誰に?)、と思っていたら、「ゴスペラーズ」や「RAG FAIR」によって「ア・カペラ」ブームが巻き起こり、こういうものが「ア・カペラ」なのだ、という認識が広がってくれました。それでも、おおもとの「教会風に」という意味からは微妙にずれてはいるのですが、まあ、この程度の誤差は認めてやりましょうね。
そんな、今風「ア・カペラ」に欠かせないのが、ヴォイス・パーカッションでしょう。聖歌隊時代にポリフォニーを歌っていた頃は、きれいにハモってさえいれば大丈夫だったのでしょうが、「今」の音楽をビート感たっぷりに歌うためには、この、声によるリズム楽器は必須アイテム、「ヴォーチェス8」のメンバーも、その修練には余念がありません。さらに完璧を期すために、彼らはわざわざアメリカのシリコン・ヴァレーにあるスタジオにまで出向いて録音を行いました。
その成果は、めざましいものがあります。なんせ、マイケル・ジャクソンの「Smooth Criminal」のように複雑なリズム帯を駆使したものでも、彼らはなんなく「声」だけでその世界にほぼ近似したものを作り上げているのですからね。あるいは、最初はしっとりとホモフォニックに見事なハーモニーを聴かせていたところに、いきなりこのリズムが入ってくる、などというショッキングなアレンジは、とても効果的です。このグループの「お抱え」アレンジャーであるジム・クレメンツの手腕は、見事に花開きました。何曲も収録されているボンド・ソングでも、別の曲のテーマをさりげなく紛れ込ませたりして、芸の細かいところも見せています。
個人的にもっともハマったのは、ビーチ・ボーイズの「Good Vibrations」でしょうか。かつて、バーバーショップのグループがこの曲をいとも無惨に演奏していたのを聴いたことがありますが、そんな苦い体験を払拭するような、オリジナルのビート感を完璧にコピーした素晴らしい演奏です。途中で出てくるレスリー・スピーカー(ハモンド-B3の専用アイテム)の物まねが、見事に決まっていますし。
ただ、ソロをとったときに、男声メンバーはそれぞれに熱く歌っているのに、女性のうちの一人がなんとも硬直した歌い方しか出来ていないのが、ちょっと耳障りでした。他が完璧すぎると、こんなところでも気になってしまいます。

CD Artwork © Signum Records
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by jurassic_oyaji | 2010-06-23 20:19 | 合唱 | Comments(0)