おやぢの部屋2
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BARTÓK/Music for Strings, Percussion & Celesta
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Zoltán Kocsis/
Hungarian National Philharmonic Orchestra
HUNGAROTON/HSACD 32510(hybrid SACD)




このSACDは、HUNGAROTONが進めている「バルトーク・ニュー・シリーズ」という企画の10番目のものなのだそうです。おそらく、前にご紹介した「オケコン」なども、このシリーズに含まれているのでしょう。全編SACDでのリリースというのが非常に嬉しいところです。
今回のアイテムは、「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」と、「弦楽器のためのディヴェルティメント」、そして「ハンガリーの風景」の3曲が入ったものです。おまけみたいに付いている「風景」以外は、管楽器が全く登場しないというユニークな編成の曲が取り上げられています。
タイトルを短く言うことが好きなクラシック・マニアの間では最初の曲はもっぱら「弦チェレ」と呼ばれているそうですね。ただ、この呼び名に対しては打楽器奏者は常に「なんで俺の楽器だけ抜いたんだ!」と不満に思っていることでしょう。しかし、実際は曲の中で使われているのに、フルタイトルになったときでさえも、その中には入れてもらえなかった楽器があるってこと、知ってました?それは「ピアノ」と「ハープ」です。ピアノなどは、チェレスタよりもはるかに活躍しているというのに、どうしてタイトルに入っていないのでしょうね。あるいは「打楽器」の中に含まれているのだとか。いえいえ、もしそうだとしたら、チェレスタの方がはるかに「打楽器度」は高いはずですよ。なんたって、中身はただのグロッケンなんですからね。
そんな謎を抱えつつ、この曲はその他には例を見ない楽器編成と、弦楽器は2群に分かれて左右に配置されるという特殊なフォーメーションによって、ほとんど「現代曲」のような扱いを受けることすらありました。例えば、ティンパニの音程をペダルによって操作して、グリッサンドのような効果を出しているあたりは、まさに「現代音楽」ならではの「特殊奏法」なのですからね。
ですから、この曲を聴くときには、そんなエッジのきいた颯爽としたものをつい求めてしまうのかもしれません。そんな中でこのコチシュの演奏を聴くと、なんだか肩すかしをくらったような気にはなりませんか?特に、最初の楽章「アンダンテ・トランクィロ」などは、SONY時代のブーレーズなどに見られる血が凍りつくような冷徹さに慣れた耳には、そのいともあっさりとした語り口には拍子抜けしてしまうかもしれません。しかし、それは同時に、なんとも味わいのある音楽であることにも気づかされるはずです。ハンガリー独特の付点音符のリズムや、民謡に由来する旋法、あるいは民謡そのものの引用などが、いとも素直に体の中に入ってくるような気にはならないでしょうか。
そう、かつて彼の音楽は「黄金分割」とか「フィボナッチ数列」などという小難しいタームによって語られていたことがありました。1978年に出版されたエルネ・レンドヴァイの著作の日本語訳「バルトークの作曲技法」は、そんな流れでのある意味バイブルでした。
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そんな、ちょっと居心地の悪い鎧をまとっていた感のあるバルトークの音楽は、実はもっと素朴な魅力に包まれているものなのだ、ということを思い起こさせてくれるのが、この演奏なのではないでしょうか。そう思って聴いていると、「ディヴェルティメント」の最後の楽章に唐突にユニゾンで現れる土俗的なフレーズにも、確かな意味を見いだせるはずです。
SACDの暖かいサウンドも、そんな印象を助けるものです。このアルバムでの主役である弦楽器の、特に弱音でのしっとりとした美しさは絶品です。そこをほのかに彩るチェレスタの特異な音色、そんなバルトークのオーケストレーションの機微は、CDレイヤーで味わうことは極めて困難です。

SACD Artwork © Hungaroton Records Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2010-06-28 20:47 | オーケストラ | Comments(0)