おやぢの部屋2
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BACH/Matthäus-Passion
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Paul Agnew(Ev), Alan Ewing(Jes)
Olga Pasichnyk(Sop), Damien Guillon(CT)
Jean-Claude Malgoire/
Choeur de Chambre de Mamur
La Grande Écurie et la Chambre du Roy
CALLIOPE/CAL 9431.2




ジャン・クロード・マルゴワールが1966年に設立した「王室大厩舎・王宮付き楽団」というとんでもない訳語が大手を振ってまかり通っているオリジナル楽器の演奏団体は、現在まで存続している同じジャンルの団体としてはもはやかなりの古参となってしまいました。それなりに注目されるような録音も発表していたのですが、いまいち知名度が上がらないのは、やはりそんな訳の分からない日本語表記のせいなのかもしれません。
ちなみに、マルゴワール自身は、この団体を立ち上げたときには、まだオーボエ奏者としての二足の草鞋を履いていました。翌年に創設(というか、改組)されたパリ管弦楽団に、初代音楽監督であるシャルル・ミュンシュに請われてコール・アングレ奏者として参加したのです。1970年、大阪万博とのタイアップで初来日したときのプログラムの写真を見ると、確かに彼の姿が写っています。フルートのトップはデボスト、3番にアラン・マリオンがいますね。これはカラヤンとの演奏でしょうが、1969年にカラヤンとパリ管が録音したフランクの交響曲のレコード(EMI)には、コール・アングレのソリストとして彼の名前がクレジットされています。そういえば、「ルーヴル音楽隊」のミンコフスキも、元々はファゴット奏者でしたね。
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そんなマルゴワールも、最近ではこの世界の「重鎮」として注目を集めているようです。2009年の4月にパリのシャンゼリゼ劇場で行われた「マタイ受難曲」の模様が、即座にCDとなって登場しました。
「マタイ」全曲がCD2枚組なのも驚きですが、その演奏時間が「2時間37分」(正確には「2時間3655秒」)というのも、さらなる驚きです。この演奏時間、「15655秒」というのは、先日のシャイー盤が「16010秒」だったときに「世界最速」なんて言っていたのに、それをさらに上回る速さではありませんか。こんなところで競ってどうしようというのでしょう。
そんな、異常とも思えるテンポの速さが、この録音では良い意味でも悪い意味でも特徴となっています。とは言っても、「良い」面はとりあえず聴き通すために拘束される時間が少ないということぐらいしか思い浮かびませんが。
そう、ここでのマルゴワールたちの演奏は、少しでも早く演奏を終えて、冷たいビールにもありつきたい、とでも考えているかのような、とても雑なものに終始しているのです。端的に「速さ」を体験できるのが最初と最後の大合唱ですが、そこで見られる「速さ」は、決して緊張感を煽るようなものではなく、ただただゆっくり演奏するだけの強い意志を持ち得ない結果だとしか思えないような、だらしのないものでした。
そもそも、この「楽団」のメンバーのスキルは、そんな速さに付いていけるほどの高度なものではありません。フルート2本できれいにハモって欲しいアリアのオブリガートなどは、2番奏者の音程がひどくて、とても汚い響きになっていますし、オーボエ・ダ・カッチャなどというなかなか吹く機会のない楽器では、音すらまともに出ていないのですからね。
もっとも、そんな「汚い」演奏に対してもいくらか免疫がつき始めると、最後の方のドラマティックな合唱では、「きれいな」演奏からはなかなか生まれないようなショッキングな表現が現れたりしますから、一概に「悪い」面だけではないのかもしれません。
そうなってくると、最初はだらしなく聞こえていたアグニューのエヴァンゲリストにも、粗さゆえの魅力も出てきます。しかし、本当はカウンター・テナーのダミアン・ギヨンのように、最初からインパクトを与えてくれるような歌い方をしてくれた方が良いに決まってます。1986年にSONYにモーツァルトの「レクイエム」を録音したときにドミニク・ヴィスを起用したように、マルゴワールはこういう刺激的な声が好きなのかもしれませんね。決して「丸く終わる」ことはないのでしょう。

CD Artwork © Calliope
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by jurassic_oyaji | 2010-06-30 21:25 | 合唱 | Comments(0)