おやぢの部屋2
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GERSHWIN by GROFÉ/Symphonic Jazz
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Lincoln Mayorga(Pf)
Al Gallodoro(Reed)
Steven Richman/
Harmonie Ensemble
HARMONIA MUNDI/HMU 907492




このアルバムのタイトルは「グローフェによるガーシュイン」です。グローフェというのは、もちろん「グランド・キャニオン」で有名なアメリカの作曲家ファーディ・グローフェのことですね。彼は、ガーシュウィンが「ラプソディ・イン・ブルー」を作曲したときに、そのオーケストレーションを担当した人、というくくりでよく語られています。そんな時のグローフェに人が抱くのは、クラシックのスキルの乏しいガーシュウィンに対して、アカデミックな部分での手助けをした人、というイメージなのではないでしょうか。それにしては、そのグローフェによる「ラプソディ~」の最初の形が「ジャズのビッグバンド編成」というのが、ちょっと納得のいかないことになってきます。グローフェという「クラシック」の作曲者に依頼したのなら、なぜ最初から普通のオーケストラの編成ではなかったのでしょうか?
そのあたりが、もう一つのタイトル「シンフォニック・ジャズ」というタームを解き明かす鍵となります。きちんとしたクラシックの教育を受け、クラシックのオーケストラの奏者としての経験もあるポール・ホワイトマンがつくった楽団は、今から考えればかなり変ちくりんな楽器編成を持ったものでした。いわゆる「ビッグバンド」とはちょっと違っていて、ふつうはそのようなバンドには含まれていないホルンやチューバが入っています。リズムセクションも、ただのドラムセットではなくティンパニやらチューブラー・ベルなども入った多彩な打楽器と、なんとバンジョーまでが含まれています。そして、「シンフォニック」と呼ばれるだけあって、ヴァイオリンが最低でも8人は加わっているという不思議な編成です。これは、ガーシュウィンが没した8年後に公開された「アメリカ交響楽(原題はRhapsody in Blue)」という映画の中で実際に見ることが出来ます。なんたって、ホワイトマンが「ヒムセルフ」で出演しているのですから、リアリティがあります(指揮棒が異様に長い!)。ガーシュウィンがソロを弾いている隣に、バンドのピアノもあるのが面白いですね。
(なぜか動画の埋め込みができなくなってしまったので、こちらからご覧ください)
そして、この編成のために編曲を提供していたのが、当時ホワイトマンのバンドの専属アレンジャーだったグローフェなのですね。彼は、どちらかと言えばクラシックではなく、言ってみればこのようなショービズの世界で活躍した作・編曲家として語られるべき人だったのでしょう。そのあたりは、このアルバムにたっぷり収録されている、ガーシュウィン・ナンバーの編曲を聞けば、よくわかることです。
そのためのお膳立てに駆りだされたのは、かつてホワイトマンの楽団で実際に演奏していたというサックス奏者アル・ガロドロですもちろん、他の木管楽器も演奏している「マルチリード」です。カクテルではありませんが(それは「マルガリータ」)。もう90歳を軽く超えているはずのガロドロの演奏は、まさに驚異的です。「Summertime」での彼以外にはなしえないほどの奇跡的なソロ、そして、「ラプソディ~」では冒頭のクラリネット・ソロ(グリッサンドは絶品)に続いて、バス・クラリネット、サックスと、おいしいところを独り占めしているのですから、すごすぎます。
ジャケットはガーシュイン自身が写っている写真、そして、中を開くとデジパックに収まっていたのは、こんな「レコード」のミニチュアでした。
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こちらには、日本製の「ドーナツ盤」のミニチュアがありましたが、今回はおそらく「SPレコード」なのでしょうね。溝の感じがなかなかリアルです。もっとも、こちらも「同心円」になっていますが。
そこまでしてこのCDが伝えたかったのは、まさにガーシュインその人が生きていたころの彼の音楽の真の姿だったのでしょう。そう、ここではそんな1920年代から1930年代に一世を風靡した「シンフォニック・ジャズ」が、いとも生々しい姿で再現されていたのです。

CD Artwork © Harmonia Mundi USA
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by jurassic_oyaji | 2010-07-13 20:09 | オーケストラ | Comments(0)