おやぢの部屋2
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BRUCKNER/Motets et Messe no 2
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Norbert Balatsch/
Choeur de Radio France
Orchestre Philharmonique de Radio France
RADIO FRANCE/FRF006




毎年夏に行われるバイロイト音楽祭を、年末にNHK-FMが放送するという「年中行事」は、今でも続いているのでしょうか。だいぶ昔のことになりますが、その時の解説を作曲家の柴田南雄さんが行っているのを、よく聴いていたことがありました。おそらく、原稿もご自分でお書きになっていたのでしょう、その精緻な分析に基づく解説は、とても刺激的なもの、そこでワーグナーについて学んだことは数知れません。「『ライトモチーフ』ではなく、『グルンドテーマ』というのが正しい」といったような蘊蓄は、今でも確かな教えとして残っています。さらに、柴田さんはドイツ語の発音が非常に正確でした。ですから、出演者の名前なども、それまでカタカナでなじんでいたものとは微妙に異なっていて、やはりショックを受けたものです。「Karl Böhm」という、その頃のバイロイトの常連だった指揮者の名前も、NHKのアナウンサーによる「ベーム」というカタカナとは完璧に別物のウムラウトで発音してくれたのですから、それは新鮮な驚きでした。
ある年には、それまで長年バイロイト音楽祭の合唱団の指揮を担当してきたウィルヘルム・ピッツが引退することになり、後任の合唱指揮者が紹介されました。もちろん、その名前は柴田さんでも初めて聞くものだったのでしょう、「『ノルベルト・バラッチュ』という人でしょうか」と、一つ一つの音節を、ことさらていねいに発音していました。なんだか、壊れかけた建物のような(それは「バラック」)イメージもあって、その名前はその時にはっきり脳裏に刻まれることになりました。
1928年に生まれたバラッチュは、最初はあのウィーン少年合唱団のメンバーとして、教育を受けています。大学時代に作った合唱団は、オーストリアの合唱コンクールで、何度も優勝したそうです。そして、1968年から1983年までは、ウィーン国立歌劇場の首席合唱指揮者を務めます。もちろん、その間には30年近くにわたってバイロイト音楽祭の合唱指揮者を務めることにもなりました。さらに、世界中のオペラハウスからの要請で、客演の合唱指揮を務めるとともに、ウィーン・フィルを始めとしたオーケストラの指揮者としてもキャリアを築きます(その中には、日本の大阪フィルも含まれています)。ある意味では、世界のトップに上り詰めた合唱指揮者と言えるでしょうね。
そんなバラッチュは、最近ではラジオ・フランスの合唱団とも親密な関係を持っています。このアルバムは、最近出来たラジオ・フランスのアーカイヴによる自主レーベルからのリリース、そのコンビが2000年の5月30日に、パリのサル・プレイエルで行ったコンサートのライブ録音です。
この合唱団は、ラジオ・フランスのもとにあるフランス国立管や、フランス放送フィルと共演するための、フランスでは唯一の大編成のプロの合唱団なのだそうです。メンバー表は掲載されていないので正確な人数は分かりませんが、おそらく100人は超えるメンバーが歌っているような感じは、聴いていて分かります。彼らは、聴き慣れたブルックナーのモテットを、そんな人数に見合ったとても深い響きで演奏してくれていました。しかし、それは、まるでロシアの広大な大地を思い起こさせるような、音程も定かでなくなってしまうほどの止めどもない「深さ」であることには、かすかな戸惑いを禁じ得ません。ほとんどクラスターと化した重々しいブルックナー、それはそれで一つの姿ではあるのでしょうが、それを受け入れるのにはかなりの苦痛と忍耐を伴うことでしょう。
ミサ曲第2番も、まるでバックのブラスバンドに張り合うかのような粗野な合唱には、ついていくのはかなり困難なことになります。何よりいけないのは、この合唱から敬虔さのようなものが全く感じられないことです。ひたすらがなり立てるだけの声によるミサ、それがブルックナーであるだけに、異様さは尋常ではありません。

CD Artwork © Radio France
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by jurassic_oyaji | 2010-07-19 20:10 | 合唱 | Comments(0)