おやぢの部屋2
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HOLST/The Planets
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Yevgeny Svetlanov/
The Sixteen
Philharmonia Orchestra
BRILLIANT/94044




2002年に亡くなったロシアの巨匠スヴェトラーノフが、199111月にCOLLINSに録音した「惑星」が、BRILLIANTから発売になりました。スヴェトラーノフとホルストという一見ミスマッチ、でも、怖いもの見たさに聴いてみることにしましょうか。なんたって、1000円以下で買えるのですから、気に入らなくたってそんなにダメージはありませんし。同じようにかつては1000円以下で買えたはずのNAXOSなどは、最近の国内盤仕様は法外とも言えるような価格設定になっているので、以前ほどの魅力が感じられなくなっていますしね。
ロンドンのフィルハーモニア管弦楽団と共演したこのCD、おそらくライブではなくセッション録音なのでしょう、元の録音がとてもバランスが良く、ダイナミック・レンジも驚くほど広いのが充分にうかがえるものです。例えば「土星」の始めの頃に現れる、とても珍しい楽器「バス・オーボエ」のソロなどは、普通はよほど気を付けていないと気づかないものなのですが、ここでははっきり浮き上がるように聞こえてきます。きちんとしたマスタリングが行われていれば、おそらくその上に匂うような肌触りが加わるのでしょうが、この価格ですからそこまで望むのは無理というもの、いや、もっと高いCDで、これよりひどい録音のものなどは、いくらでもありますがね。
スヴェトラーノフは、冒頭の「火星」から、とても重心の低い、堂々たる音楽を聴かせてくれています。テンポを遅めにとって、思い切りオーケストラを鳴らすという、いつもながらの彼ならではのやり方です。そこには、じわじわと盛り上げていった末に、とても中身の濃いクライマックスが生みだされるというエクスタシーが待っています。これが、なかなか心地よいのですね。この曲にありがちな派手な色彩感をあえて避け、もっと根源的な力を表に出すというようなアプローチは、さすがです。
有名な「木星」も、変に浮ついたところのない「大人」の音楽です。正直、あの「聖歌」が出てくるまでの段取りが、いかにも唐突という演奏ばかり聴いてきたので、そのあたりがきちんと意味のあるものとしてとらえられているスヴェトラーノフの設計には目を見張ります。これでこそ、「聖歌」の格調の高さが遺憾なく生かされるものでしょう。そう、これほど悠揚迫らないものを聴いてしまうと、それをポップスにカバーした平原なんたらという歌手のセンスがいかに薄っぺらなものであるかがはっきり分かってしまいます(最近、高校野球のテーマソングをよく耳にしますが、これも最悪ですね)。
ただ、最後の「海王星」(もちろん、「冥王星」はありません)に登場する女声合唱は、ちょっとな、という感じです。「ザ・シックスティーン」のメンバーが歌っているのですが、録音のせいでしょうか、あまりにもくっきり音が立ちすぎていて、違和感があるのですね。それこそ、宇宙の彼方から聞こえてきて、そのまま去っていくような(いや、「去っていく」方はなかなかスリリングなのですが)ミステリアスさが欲しいのに、ちょっと生々しすぎるような。
カップリングとして、リムスキー・コルサコフの「ムラダ組曲」という珍しい曲が聴けます。「♪吹~けば飛ぶような」は、「ムラタ」ですね。1870年頃に、他の「五人組」のメンバーとの共作として計画されたバレエ音楽ですが、そのプランは失敗に終わってしまったので、その時の音楽を用いて1889年頃に改めて作り始めたものなのだそうです。1曲目の「イントロダクション」でアルト・フルートが加わっているあたりは、彼のオーケストレーションの新境地なのでしょうか。興味深いのは、4曲目の「インド人の踊り」というのが、1888年に作られた「シェエラザード」の第3楽章に非常によく似ていることです。きっと、モチーフ自体はこちらの方が先に出来ていたのでしょうね。

CD Artwork © Brilliant Classics
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by jurassic_oyaji | 2010-07-25 22:15 | オーケストラ | Comments(0)