おやぢの部屋2
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Masterworks for Flute and Piano II
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Sharon Bezaly(Fl)
Ronald Brautigam(Pf)
BIS/SACD-1729(hybrid SACD)




精力的にフルートのレパートリーを録音し続けているBISの「看板娘」ベザリーですが、進行中のプロジェクト「From A to Z」は一体どうなってしまったのでしょうか。
今回の最新アルバムは、「フルートとピアノのための名曲集、その2」というタイトルです。ですから、当然「その1」があるはずですが、それは2006年にリリースされた、プロコフィエフやシューベルトが収録されているものでした。どちらも、ピアニストはフォルテピアノなどにも造詣の深いオランダ人のロナルド・ブラウティハムです。「1」と「2」に共通しているのは、「名曲集」、とは言っても、それはリスナーにとっての「名曲」というわけではなく、プレーヤー、つまり、音大生や力のあるフルート愛好家であれば、必ず1度は楽譜に目を通したことがあるか、場合によっては演奏したことさえあるような曲、という意味での「名曲」だという点には、注意が必要です。それらの曲は、あのゴールウェイが雑誌のインタビューで語っていたように、「教育としては必要なものだが、必ずしも録音したいとは思わない」という点でも共通しています。「1」では、ジョリヴェの「リノスの歌」あたりが、そんな曲の代表でしょうか。そして、今回はマルタンの「バラード」あたりが、決してゴールウェイがCDに録音することはないような曲になるのでしょうね。きつねとたぬきだったらいいのでしょうが(それは「マルちゃん」)。
マルタン以外の収録曲は、プーランクのソナタ、ライネッケの「ウンディーヌ」、マルティヌーのソナタ、そしてメシアンの「クロウタドリ」です。このあたりになってくると、すでに数々の名演が出揃っているものばかりですから、新参者としては厳しいところです。
ベザリーの録音ではいつものことですが、彼女のブレスの音が盛大に聞こえるのがかなり耳障りです。それは、もしかしたら循環呼吸での鼻からのブレス(というか、吸音)を目立たせたいために、正規のブレスでもあえてはっきり音を立てているかのように聞こえてしまいます。あんたの得意技はよくわかったから、どうか、もっと目立たないようにやってくれないかな、という思いです。そう、あくまでも循環呼吸というのは「手段」であって、それ自体を見せびらかすものでは決してないのですからね。ましてや、そこで得られるはずのせっかくの超長いフレーズが、「鼻息」のために中断されてしまったのでは、何の意味もありません。
もう一つの彼女の「欠点」である、「後ふくらまし」も、健在でした。まあ、それが彼女の持ち味だと割り切ってしまえばそれほど気にならないものなのかもしれませんが、今回のレパートリーの中に多く現れる、しっとり歌うフレーズを多く含んだ緩徐楽章では、それは命取りになりかねません。特にライネッケの第3楽章やマルティヌーの第2楽章のように、ぜひともなめらかな旋律線を作って、思い切り泣かせて欲しいと思っている音楽で、この「後ふくらまし」によって、繊細で甘美なメロディがデコボコに変形されてしまう様を聴くのは、とても辛いものがあります。せめて、フレーズの終わりぐらいはきちんと収めてほしいところを、無神経にふくらまされたりすると、演奏家としての品位さえ疑いたくなってしまいます。ピアニストはいとも切なく歌っているというのに。
彼女の持ち味と言ったら、やはり技巧的なパッセージを鮮やかに吹き切ってくれるところでしょうか。マルタンなどでは、それは見事な早業を披露してくれています。ところが、それが最大限に発揮できるはずのメシアンになると、そんなたくさんの音の中から聞こえてきてほしい「鳥の声」が、全く感じられないのですよ。これは、ある意味ショック。もしかしたら、メシアンというのは、本物と偽物を冷徹に見分けてしまう試金石のようなものなのかもしれませんね。

SACD Artwork © BIS Records AB
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by jurassic_oyaji | 2010-07-29 20:46 | フルート | Comments(0)