おやぢの部屋2
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In Nativitate Beatae Mariae Virginis
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Espen Aalberg, Lars Sitter(Perc)
Anne Kleivset/
Schola Sanctae Sunnivae
2L/2L-069-SACD(hybrid SACD)




ジャケットには「聖母マリアの生誕」というタイトルだけ、作曲家や演奏家の名前は書いてありません。いったいどういうものなのかは全く分からないまま、このレーベルの音の良さだけを信じて、買ってみました。しかし、このジャケットの絵はいったい何を描いたものなのでしょう。上にあるのは心臓?そこから血がしたたり落ちているようですが、なんだか赤い毛糸のようにも見えますね(それは、「マリアのセーター」)。
ライナーを読んでみると、やっと概要がつかめました。それは、ノルウェーのさる大聖堂に残っていた、13世紀の後半に歌われていた単旋律聖歌の写本の中の曲を、グレゴリオ聖歌を歌うために作られた女声合唱団が歌っていたものなのです。それだけではなんの変哲もないものなのですが、それと同時に、ヘニング・ソンメロという1952年生まれで、幅広い分野で活躍している作曲家が、聖歌をモチーフに2007年に作った曲オルガン曲を、この録音のために打楽器奏者2人のための編成に書き直したものを、聖歌の合間に演奏する、というアイディアが盛り込まれているあたりが、ユニークなところです。
言ってみれば、古い音楽と新しい音楽とのコラボレーションみたいなものなのでしょうか。スウィングル・シンガーズあたりがかつてやっていた、ルネサンス期のマドリガルを、シンセサイザーなどで伴奏する、といったようなスタイルなのかもしれませんね。
この合唱団は、1992年に、ここでも指揮をしているアンネ・クライヴセットという女性によって創設されました。もちろん、メンバーはすべて女性、セッションの写真では、12人で歌われています。こういう単旋律の、いわゆるグレゴリオ聖歌は、もっぱら男声によって歌われることの方が多いのではないでしょうか。その際には、現代的な発声ではなく、多少だみ声気味のあまり洗練されていない歌い方の方が尊ばれているような気がしませんか?もちろん、すべてユニゾンで歌われるのですが、高い音になるといきなり音色が変わったりするのが、いかにも「聖歌」っぽい感じがするものです。しかし、ここで歌っている「スコラ・サンクテ・スンニヴェ」という名前の女声合唱団からは、そのようなちょっと鄙びた感触は全く味わうことが出来ません。なんでも、このような音楽を演奏する上での約束事というものは、かなり厳格に定められているそうなのですが、そんなものにはあまりこだわらず、素直に「現代」に生きる「聖歌」を楽しんでいるような余裕のようなものを感じることが出来るのです。
そこにからんでくるのが、打楽器のアンサンブルです。主にマリンバやビブラフォン、グロッケンという鍵盤打楽器による、メロディアスな音楽は、元々はオルガン曲だったせいなのでしょう。そのオルガンのペダルを再現したような、超低音のマリンバなども動員されて、「打楽器」とは思えないようなハーモニーまでも表現されています。しかし、この作曲家は、放送の仕事もしているそうで、そんな「現代的」というよりは、「商業的」とでも言えそうな、かなりポップな肌触りは、いくらなんでも「聖歌」にはそぐわないな、という気もしてしまいます。並べて聴くと、あまりに方向性が違いすぎるのですよね。
そんな疑問を抱きながら、最後の「聖歌」になると、そこには伴奏としてその打楽器が入ってきましたよ。そうすると、そこではなんと「聖歌」の方が「商業音楽」に歩み寄ってきたではありませんか。歌っているのは確かに単旋律なのですが、そこからは見事にハーモナイズされたメロディが聞こえてくるのですよ。このあたりが、彼女らが目指していたものだったのですね。
曲の最後には、盛大に鳴り響くチューブラー・ベル。リアルこの上ないものすごい録音と相まって、「宗教」や「商業」を超えた愉悦感が、確かにここには漂っています。

SACD Artwork © Lindberg Lyd AS
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by jurassic_oyaji | 2010-07-31 19:46 | 合唱 | Comments(0)