おやぢの部屋2
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SIBELIUS/Concerto in D minor
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Denis Bouriakov(Fl)
Robin Davis(Pf)
BEEP/BP40




このレーベルは、イギリスのフルーティスト、ウィリアム・ベネットが自分の録音をリリースするために作ったものです。おそらく、ポーラ・ロビソンPERGOLAレーベルのように、過去に他のレーベルから出ていたものの管理なども行うような性格も持っているのでしょうね。今までは、国内ではムラマツとか山野楽器といった特定の店舗でしか入手できませんでしたが、やっと普通のルートで流通されるようになりました。ちなみに、このレーベルのエグゼクティブ・プロデューサーはベネット夫人の美智恵さん。彼女もやはりフルーティストで、さる日本人フルーティストと結婚していたのですが、なぜかベネットのもとへ走ってしまったという方です。昔のことですが。
カタログの中には、ベネットのソロだけではなく、弟子のデニス・ブリアコフと2003年に共演したバッハのドッペル・コンツェルトなどもありました。今回(と言っても、リリースは昨年のことですが)晴れてその「弟子」が一本立ちしたソロアルバムが「師匠」のレーベルからリリースされたことになります。それだったら、なんの支障もないでしょう。
1981年にウクライナに生まれたブリアコフは、モスクワの大学を卒業したのち、2000年からはイギリスの王立音楽院でベネットの教えを受けています。2004年に卒業後は、フリーランスのフルーティストとして活躍していましたが、2008年からはニューヨークのメトロポリタン歌劇場オーケストラの首席奏者を務めています。ロシア圏のフルーティストでこのようなインターナショナルなポストを獲得した人は、今までほとんどいなかったのではないでしょうか。
このアルバムは、すべてヴァイオリンのための作品をフルートで演奏しているという意欲的なものです。その目玉は、なんといってもシベリウスのヴァイオリン協奏曲でしょう。確か「師匠」もベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲をフルートで演奏していましたね。シベリウスをフルートで吹いたのは世界初の試みなのだそうですが、これは、完璧なテクニックに裏付けされた、素晴らしい演奏です。特に、良く響く豊かな低音をフルに生かしての、まさにヴァイオリン顔負けの華麗な演奏には、舌を巻くほかはありません。さらに、音色の多彩なこと。単に力だけで迫るのではなく、実に表情豊かに歌ってくれています。時には、ヴァイオリンをしのぐほどのハッとさせられるような瞬間があって、その才能の豊かさを感じさせてくれます。
しかし、そんなブリアコフをもってしても、第2楽章のような息の長い音楽では、ちょっとヴァイオリンには太刀打ち出来ないようなところも見えてしまいます。でも、彼のことですから、将来はそんな限界を打ち破ることも可能なのではないでしょうか。さらに、ここではオーケストラではなく、ピアノによるリダクション伴奏になっています。ピアノのデイヴィスは確かにスケールの大きな演奏で頑張ってくれてはいますが、どうしてもシベリウスの持つ世界観が極めて限定された形でしか伝わってこないのも確か、そのあたりも含めて、さらに完璧な形になったものを、いずれは聴かせてくれることでしょう。
その他の小曲では、胸のすくような演奏が繰り広げられています。サン・サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」までもがフルートで出来てしまうのは驚きですが、中でもチャイコフスキーの「メランコリックなセレナーデ」が出色でした。文字通り「メランコリック」なテーマの歌わせ方が絶品、これはまさに「血」のなせる業でしょう。そして、エンディングの超ピアニッシモときたら、感涙ものですよ。
彼が日本の聴衆の前に初めて姿を現したのは、2007年のフルート・コンヴェンションの時でした。友人がその時の模様をこちらで熱く語っています。あわせてご覧下さい。

CD Artwork © Beep Records
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by jurassic_oyaji | 2010-08-06 20:33 | フルート | Comments(0)