おやぢの部屋2
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BEETHOVEN/Symphonies nos. 4 & 6
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Jan Willem de Vriend/
The Netherlands Symphony Orchestra
CHALLENGE/CC72361(hybrid SACD)




マーラーの「巨人」のハンブルク稿で初めてその名前を知った指揮者のデ・フリエント(彼は、ヴァイオリニストとして有名だったんですね)とネーデルランド交響楽団とのコンビが、ベートーヴェンの交響曲の録音を始めたようです。その第1弾が「4番」と「6番」、なかなか渋いところです。
前回のマーラーでも、透明感あふれる録音には好感が持てましたが、今回もそれは裏切られることはありませんでした。その音の印象は、まるでかつての東ドイツの国営企業DEUTSCHE SCHALLPLATTENが、ドレスデンのルカ教会で行った一連の録音に見られたような、深さの中にも鋭さをたたえたものでした。そう、あのスイートナーやケーゲルの名盤で耳に焼きついている、まさに「いぶし銀」といった感じの音ですね。
もちろん、こちらは最新の高解像度デジタル録音なのですが、そのように「デジタル」を極めていくと、たどり着いたところがアナログ録音だったというあたりが、興味深いところです。ESOTERICから出ているアナログのマスターテープからのSACD、みたいな感じですね。
そんな、とびきりみずみずしい音の中から聞こえてきたのは、最近のベートーヴェン演奏ではもはや一つのスタンダードとなっている、モダン・オーケストラによる、限りなくピリオド楽器に近いものを目指す演奏、いわゆる「ピリオド・アプローチ」でした。弦楽器は出来ることならガット弦を使用し、ビブラートはかけないのが原則、金管楽器や打楽器はピリオド楽器そのものを使います。木管楽器は、メカニズムはモダンですが、フルートなどはより素朴な音色の木製の楽器に持ち替えることが、ここでは推奨されています。いや、ガラス製ではありませんよ(それは水晶)。さらに、その時代の奏法を採用すれば、当然フレージングなども聴きなれたものとは変わってくることでしょう。
そんなやり方を極限まで徹底させたことで知られているのが、ノリントンの指揮するシュトゥットガルト放送交響楽団でしょうね。ただ、彼らのベートーヴェンの場合、さらにその上に指揮者の強烈な個性が加わっていたため、エモーショナルな部分が突出して聞こえてきて多少真摯さには欠けるという印象は避けられませんでした。彼に限ったことではありませんが、本来は、当時の演奏習慣を踏まえた上で、作曲者が楽譜に書いたことを再現することを最優先に考えていると思われている「古楽器系」の指揮者が、実は軒並み自己表現に終始しているのには辟易してしまいます。もちろん、その最も醜い例が、あのアーノンクールであることは、言を待ちません。
その点、このデ・フリエントの場合は、楽譜(ライナーに記載はありませんが、デル・マー版であることは間違いないでしょう)が求めているものをまずきっちり音にしようという姿勢が強く感じられます。まさに、作曲家の意図を語らせることに全力を傾けるというやり方、それは、こういう風潮の中ではとても貴重なもののように思われます。
例えば、トランペットやホルンなどはナチュラル管を使うだけで全く違う音楽が生まれてきますから、それ以上の細工を弄するのはかなり余計なことなのだな、ということが、この演奏を聴くと良く分かります。ティンパニなども、楽器自体がすでに雄弁に語っています。特に「4番」の第1楽章に出てくるピアニシモでのロールが、とても軽いバチを使っているのでしょうか、まるでスネアドラムのように聞こえてきますよ。こんな表情豊かなティンパニなんて、聴いたことがありません。かと思うと、「6番」ではまさに「雷鳴」そのものの激しい音に、驚かされます。そういえば、この曲では、この楽章以外にはティンパニは使われてはいないのでしたね。2楽章での、弱音器を付けた弦楽器(これも、楽譜の指定)のテクスチュアも、この優秀な録音と相まって、ゾクゾクするほど伝わってきます。

SACD Artwork © Challenge Records Int.
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by jurassic_oyaji | 2010-08-13 19:54 | オーケストラ | Comments(0)