おやぢの部屋2
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WAGNER/Das Rheingold







Bertrand de Billy/
Symphony Orchestra of the Gran Teatre del Liceu
OPUS ARTE/OA 0910 D(DVD)



ハリー・クプファーという、韓国料理のような(それは「クッパ」)演出家が、ダニエル・バレンボイムと組んで最初に「指環」を作り上げたのは、1988年のバイロイトでのことでした。このプロダクションは1992年まで上演され、その模様は91年(「ライン」)と92年(それ以外)の映像をDVDで見ることが出来ます。レーザー光線を多用した近未来を思わせる演出は大きな評判を得ることになるのですが、このコンビはそれに満足することなく、1996年には、バレンボイムのホームグラウンドであるベルリン国立歌劇場で、バイロイトとは全く異なる新たな演出が作り上げられることになるのです。この、ベルリンでのプロダクションを、スペイン、バルセロナのリセウ劇場で2004年に上演したものが、このDVDに収録されています。実は、このベルリン版は、2002年に日本での引っ越し公演を行っています。それこそお金も時間もなく、そしてこれが最も重要なのですが、配偶者の理解も得られず、実際にこの上演に接することが出来なかった人でも、「居ながらにして」この想像を絶する大規模なステージに触れることが出来るようになった幸運を、喜ぼうではありませんか。
同じクプファーの演出でも、ある種無機的なバイロイト版を見慣れた目には、最初のラインの水底のシーンからして、異様にデフォルメされたリアリティに驚かされることでしょう。ぬめぬめした岩肌を、ラインの乙女や本当に醜いアルベリッヒ(ギュンター・フォン・カンネン。この人の存在感には、圧倒されます)がよじ登っている様は、まるで大昔のト書きに忠実な演出を見ている錯覚に陥るほどです。しかし、岩の後ろでは怪しげにレーザーが光っていますから、これがそんな先祖返りでないことはその時点で明白になっています。そして、本当にすごいのは、第2場のニーベルハイムへ移動する場面転換の部分です。ヴォータン(ファルク・シュトルックマン)とローゲ(グレアム・クラーク)が実際に「地下」へ潜ったと思ったら、ステージ全体が迫り上がってきて、そこにはアクリル製の斜めのトンネルが設けられているのが見えます(バイロイトではこのトンネルは垂直なただのはしごでした)。この中をヴォータンたちが歩いていくわけですが、下に着く頃には、そのセットは途方もない高さまで迫り上がっています。このセット、奈落の深さやタッパが十分に確保されているベルリンや、このリセウでは完璧に機能していますが、舞台機構の貧弱な日本の劇場では、果たしてどうだったのでしょうか。そのトンネルの周りの、まるでハリウッドの近未来映画から持ってきたようなおどろおどろしいマニアックなディテールにも、目を見張らせられます。場が変わるとともに、人物の設定も変わり、あの醜かったアルベリッヒが、奪った黄金のせいでしょうか、紳士然としたいでたちになっています。と同時に、場面が確実に未来へ向けてのベクトルを放ち出していることが窺えるのは、「指環」全体を通じての大きなメッセージへの伏線なのでしょうか。
ただ、しばらくして気づくのは、装置自体は大きな変化を遂げていますが、歌手の動きなどの演出プランはほとんどバイロイトとは変わっていないということです。ラインの乙女が大股を開いてアルベリッヒを誘惑する仕草も、そのアルベリッヒがヴォータンたちにだまされてしまうあたりの茶番のような段取りも、そして、終幕の神々の意味不明なつたない演技も、基本的に同じものでした。いささか「装置に負けている」という印象があったのは、ただリセウの歌手たちの修練が足らないだけのことなのでしょうか。しかし、このオペラハウスのオーケストラに対しては、そのような言い訳は通りません。およそ迫力に乏しい金管や、美しくない部分が目立ってしまう木管は、ド・ビリーの指揮を論じる以前の問題です。
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by jurassic_oyaji | 2005-04-15 19:55 | オペラ | Comments(1)
Commented by dognorah at 2005-04-28 07:43
ロンドンでの新演出を見ましたのでTBさせていただきました。