おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
クラシック侍
c0039487_20133517.jpg




杉ちゃん & 鉄平
FOXTROT/AVCA-29821



「ホフヌング音楽祭」とか「P.D.Q.バッハ」、あるいは、それらをパクッた「山本直純」など、昔からクラシック音楽をネタにして楽しく遊ぼう、という試みはたくさんありました。アイディアとしてはかなり陳腐な、例えば似たようなメロディをクラシック以外のところから持ってきて、元のクラシックの中に挿入するといったような他愛のないものなのですが、それが見事にハマると思いがけないほどの「笑い」が生まれます。正直「P.D.Q.」のネタなどは殆どワンパターンなのにもかかわらず、それがあまりに突拍子のない組み合わせだったりするものですから、無防備に聴いていると思わず爆笑しかねません。もし電車の中でヘッドフォンで聴いていたときにそんな姿をさらけ出すと、車内の全員から奇異の視線を浴びることになってしまいますよ。
そんなばからしいことは、直純で終わっていたのかと思っていたら、思いがけないところでその精神が脈々と生き延びていたのを知りました。それは、さるラジオでのトーク番組を聴いているときでした。いつもなら、新しいアルバムをリリースしたアーティストがやって来て、出来たばかりのCDを作るときにどんな気持ちだったのか、などという、どうでもいいようなことをしゃべっていくコーナーなのですが、そこで、そんな場には似つかわしくない「ヴァイオリン」の演奏などが聞こえてきたのですよ。やはり、同じようにニューアルバムのプロモーションなのですが、そこに、クラシックっぽいメロディが登場していたので、なんともびっくりしてしまいました。しばらく聴いていると、それは、かなり高度な仕掛けを施した、そんな「お笑いクラシック」だったのですね。
それは、岡田鉄平という、桐朋の大学院まで出て、コンクールの入賞歴もあるというヴァイオリニストと、杉浦哲郎という、小さい頃からピアノを学び、さまざまなバンドで編曲の「修行」を積んできたという経歴を持つピアニスト兼アレンジャーの二人から成るユニット「杉ちゃん & 鉄平」でした。2004年に、「お笑い」に特化したクラシックを演奏するために結成されたもので、今までにすでに数枚のアルバムを出していたのですが、あいにくそれには気づかずに、やっと、この最新アルバムできちんとご対面です。
今回のコンセプトは、タイトルからも分かるように、「江戸時代にクラシック音楽が伝わってきたら、こんなものになったのでは」というようなものだそうです。確かに、江戸時代といえばまさに「クラシック」の時代そのもの、バロックからロマン派までをカバーしていますからね。でも、「ロマンポルノ」じゃないですよ(それは「エロ時代」)。
そして、その「仕掛け」は、というと、元のクラシックのメロディを日本風の音階(あるいは旋法)に置き換えて遊ぶ、というものでした。バッハのコラール「主よ、人の望みの喜びよ」のオブリガートを、なんともなよなよとした「小唄」風に変えてしまい、タイトルも「仏よ、人の望みの喜びよ」と変えるというセンスは、なかなかですね。まあ、それは「そんなものか」とあしらえるほどの出来だったのですが、同じような手法で作られた「タイプライター侍」では、思わずのけぞってしまいましたよ。お察しの通り、これはルロイ・アンダーソンの「タイプライター」が元ネタ。あの忙しいメロディを「日本風」にすると、チャンバラ映画のBGMそっくりになってしまうのですね。原曲の「チン・シャッ」という音が、刀を鳴らす音に見事にシンクロするのですから、たまりません。もう一つ、ラヴェルの「ボレロ」が元ネタの「墓礼路」では、エンディングの「ラ♭・ソ・ファ・ミ♭・レ♭・ド」が、これほど「日本風」にハマるなんて、と、大爆笑でした。
でも、岡田さんのヴァイオリンはうま過ぎ。バッハの無伴奏パルティータでは、あまり演奏が素晴らしいので、どこで遊んでいるのか、殆ど分からないほどでしたよ。

CD Artwork © FOXTROT・jEo・J&K
[PR]
by jurassic_oyaji | 2010-08-21 20:15 | ポップス | Comments(0)