おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
BRIGGS/Missa for Notre Dame
c0039487_23195540.jpg


David Briggs(Org)
Stephen Layton/
The Choir of Trinity College, Cambridge
HYPERION/CDA67808




デイヴィッド・ブリッグスという、1962年生まれのイギリスのオルガニストでもある作曲家の作品集です。タイトルのミサ曲などを、自らのオルガン演奏とともに聴かせてくれています。コーラスはレイトンと、彼の持つ多くの合唱団の一つ、ケンブリッジ・トリニティ・カレッジ合唱団です。
このアルバムが録音されたのは、ブリッグスがオルガニストを務めるグロスター大聖堂、もちろん、彼はその中にあるフランス風のストップを持つ大オルガンを演奏しています。余談ですが、映画版ハリー・ポッターのロケ地にもなったこの大聖堂は「Gloucester Cathedral」という英語の綴りですから、知らない人はそのまんま「グローチェスター大聖堂」と読んでしまうかもしれませんね。「Worcester」という地名も、ブルドッグの「ウースターソース」がなかったら、「ウーチェスター」と読むのが日本人にとっては自然なことなのですからね。見事にそんな間違いを犯してしまったのが、おなじみのメーカー・インフォ。おかげで、ネットには「グローチェスター大聖堂」という実在しない建物の名前があふれています。
ちなみに、以前その「ウースター」とこの「グロスター」などの聖歌隊が一堂に会したデュリュフレのレクイエムをご紹介したことがありますが、そこでもブリッグスがオルガンを演奏していましたね。
そのデュリュフレも、作曲家としてよりはオルガニストとして有名な人でしたが、このブリッグスはまだ聖歌隊で歌っていた9歳の時に、デュリュフレの弟子であるオルガニスト、ピエール・コシュローの演奏をLPレコードで聴いて大きな衝撃を受けたそうなのです。長じてからも、パリのノートルダム寺院で「生」のコシュローも聴き、それは彼の人生観が変わるほどの体験となったのです。そのコシュローの演奏というのは、「即興演奏」と言われるものです。すでに出来上がった曲ではなく、与えられたテーマをもとに、オルガニストがその場で「即興的」に曲を作って披露する、というもの、これは特にフランスではオルガニストとしての必須のスキルとされていて、音大の卒業試験での重要なポイントにもなっています。ブリッグスは後にパリでジャン・ラングレのレッスンを受けることになりますが、その時に彼はコシュローの即興演奏の録音を、自分の手で編曲することに没頭したと言います。
ここで演奏されている「ノートルダム・ミサ」について彼は、「曲の15パーセントは、コシュローの即興演奏が元になっている」と語っていますが、そんな「合唱」と「オルガンの即興演奏」のコラボレーションとも言うべきこの作品のコンセプトは、「Introït」と呼ばれる、オルガン演奏だけの最初の曲でもはっきりと知ることが出来ます。フランスオルガン独特の華やかな音色のリード管を多用したり、ペダルでめざましいフレーズをパワフルに演奏したりと、それはもうハイテンションのオルガンには圧倒されてしまいます。そして、本編であるミサ曲が始まるわけですが、それを歌う合唱もこのオルガンに触発されたのか、あるいはレイトンのいつもながらのやり方なのか、そのとてつもないパワーには言葉を失います。その間には、またブリッグスのめくるめく技巧の丈を尽くした即興演奏が繰り広げられるという、まさに合唱とオルガンの双方で聴くものを興奮のるつぼに巻き込むという、それはエキサイティングなものでした。
いや、曲自体はそれこそデュリュフレが思い起こされるような、プレーン・チャントを素材として、それに粋な和声を施したという敬虔さに満ちあふれたものなのですが、この、まるでギンギンのヘビメタでも聴いているような興奮感が、そこに恐ろしいほどにマッチしているのですから、たまりません。
そう、このオルガンは、取り澄ました「即興演奏」というよりは、まるでキース・エマーソンのような、狂気にも近い「アドリブ・ソロ」だったのです。

CD Artwork © Hyperion Records Limited
[PR]
by jurassic_oyaji | 2010-09-07 23:21 | 合唱 | Comments(0)